Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences
Tohoku University

Research Results Report

平成24年度 若手研究者 国際共同研究支援プログラム 成果報告書

スイス連邦工科大学ローザンヌ校への派遣留学

氏名 木嶌英恵
専攻 工学研究科 材料システム工学専攻 博士課程後期2年
指導教員名 増本 博
研究テーマ スイス連邦工科大学ローザンヌ校への派遣留学
国外出張報告 出張期間:2012年9月~2013年2月
出張場所:スイス連邦工科大学ローザンヌ校

この度、2012年9月から2013年2月までの6ヵ月間、平成24年度若手研究者国際共同研究支援プログラムの支援を受け、スイスローザンヌにあるスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のセラミックス研究室(LC)に派遣させていただきました。私の博士課程の研究テーマは、複機能材料の創製を目的とした、「高周波帯域において磁気特性と誘電特性を併せ持つ(Co,CoTiO2)-Bi4Ti3O12ナノ複相膜の作製」です。派遣先のLCは、薄膜の高周波帯域の誘電率測定および評価方法で優れた実績があることから留学を志願し、事前に東北大学で磁気-誘電ナノ複相膜をスパッタで作製し、EPFLでその高周波誘電特性の評価を行いました。LCでは、高周波インピーダンス測定を主に行い、Paul Muralt教授やメンバーと議論しながら考察を進めてまいりました。留学生活後半では、使用している装置に磁界印加用のコイルを備え付け、磁気誘電複合膜の測定を行いました。その結果、優れた磁気-インピーダンス効果が得られ、この成果は、7月にプラハで行われる2013 IEEE?UFFC joint symposiaでの発表が受理されています。

研究室では、週に一度、コーヒーとクロワッサンを片手に、20人強の研究室のメンバーが集まり、ミーティングが行われています。研究室のポスドク、教授あるいは共同研究先の先生などが招待講演でいらっしゃる回もあり、内容だけでなく、発表の進め方や質問の対応などにセンスの良さが光り、大変参考になりました。ローザンヌ地方の公用語はフランス語ですが、EPFLでの授業はほぼすべて英語で行われており、訛りのある英語でコミュニケーションをとることが当たり前だったので、フランス語の話せない私でも言語面では大きな障害はありませんでした。メンバー同士の話の幅は広く、特にお互いの国の時事や慣習・発音などについての話は興味深く、海外の時事や文化背景に目を向ける良い機会になったと思っています。今後は、EPFLで得られた結果の数理解析などを重点的に、融合領域の研究としてさらに発展させていきたいと考えています。
留学生活を支えてくれたLCのNava Setter教授、Paul Muralt教授およびグループのメンバー、EPFLへの留学に推薦して下さった増本教授、および支援を賜った学際科学国際高等研究センターの国際化推進プログラムの関係者の皆様に、感謝申し上げます。

  • LCのメンバーと(左から2番目が筆者)

  • Paul Muralt教授と(左筆者)

  • ステイ先でのチーズフォンデュ(右から2番目が筆者)

  • リッフェルアルプからのマッターホルン

平成22年度 若手研究者 国際共同研究支援プログラム 成果報告書

スウェーデン王立工科大学への派遣

氏名 玉 正中
職名 教育研究支援者
指導教員名 才田 淳治
研究テーマ CALPHAD計算結果を利用した生体材料用チタン基バルク金属ガラス合金の開発
国外出張報告 出張期間:2010年6月25日~9月3日
出張場所:スウェーデン王立工科大学

学際科学国際高等研究センター国際共同研究支援プログラムの採択を受け、金属材料研究所スウェーデン王立工科大学(The Royal Institute of Technology)リエゾンオフィスの協力のもと、6月25日より9月3日まで同大学でCALPHAD計算結果を利用した生体材料用チタン基バルク金属ガラス合金の開発に関する共同研究のため客員研究員としてストックホルムを訪問した。現地は日本では経験したことがない白夜が続いた夏であった。カーテンがないと眠れない明るさは今でも脳裏に鮮明に残っており、貴重な北欧での経験となった。上記の期間中に行った研究は、1)結晶化することなく固化できる液相と結晶相の自由エネルギーが同じである温度-組成曲線(T0曲線)をCALPHAD(CALculation of PHAse Digram)接近法を用いて、多様な組成域でシミュレーションすることによって効果的にガラス形成能が高い合金を設計すること2)そのような知見にもとづいて実際にガラス合金を作製し、評価することである。まずシミュレーションによって、15種類のチタン合金を見出した後に、急冷法により薄帯及びバルク状のガラス合金として作製できるかどうか検証した。その結果、単ロール急冷法により得られた全ての薄帯はアモルファス単相を示した。その後、直径別ガラス形成能を調べ、最終的に直径10ミリ以上のチタン基バルク金属ガラスの開発に成功した。本研究の対象になるチタン合金は1) efficient cluster packing model, 2) topological instability criterion そして 3) phase diagram informationを基に計算されており、このようなシミュレーション法が高いガラス形成能を持つTi-Cu基ガラス合金の開発に非常に有効であることを実験的に証明することができた。今後、人体に対して細胞毒性が懸念されるCu元素、或いはPdのような貴金属を合金設計元素の対象より除外することを検討することで、更なる生体適合性と原料コストの改善も可能であることが期待される。また、生体適合性の評価及び改善のため、世界的に権威のあるカロリンスカ医科大学との共同研究もスウェーデン側から提案があり、今後この共同研究を通じて大きな研究成果が期待できるとともに、新材料としてチタン基ガラス合金が注目されることになるのではないかと感じた。関連研究を論文として発表するための議論も進み、かつ今後の研究方針も明確になったことで、今回の海外共同研究派遣は非常に有益な機会になった。さらに本研究課題は、学術交流協定機関との効率的な連携と互いに得意な分野(手法)で補完することで大きな進捗を得ることが出来た共同研究である。その意味で、学際センター派遣支援プログラムが目標としている国際高等研究ができる若手研究者育成とグーロバルな研究拠点形成に大きく資する滞在であったと感じている。この場を借りて惜しみないご支援を頂いた学際科学国際高等研究センターおよびリエゾンオフィスの関係各位に感謝の言葉を述べたい。

スウェーデン王立工科大学の風景と筆者が滞在したマテリアル系

共同研究打ち合わせ後のワンショット(右:マオ博士、左:筆者)

平成21年度 若手研究者 国際共同研究支援プログラム 成果報告書

NASA Goddard Space Flight Center への派遣

氏名 木村 勇気
職名 理学研究科地学専攻 助教
研究テーマ 液体のように振舞う固体:ナノ領域の拡散現象と天文学
国外出張報告 出張期間:2010年1月3日~13日
出張場所:NASA Goddard Space Flight Center, U.S.A

ナノ科学と天文分野の境界領域に新たな研究分野を形成し、宇宙の物質進化過程を知るというプログラム研究の目的のなかで、本支援プログラムでは、有機分子の形成過程に着目した。

NASAは米国内に7箇所ほど大きなキャンパスを持っており、ワシントンDC郊外にあるGoddard Space Flight Center(ゴダード宇宙飛行センター)は主に研究の役割を担っている。私は2004-2006年に派遣先のグループに所属していた。現在も共同研究が継続しており、昨年6月にも実験に訪れている。当該施設には、世界に一台しかないSmoke Generatorと呼ばれる宇宙固体微粒子を再現できる装置がある。今回は、当該研究室が昨年末に新しい建物に引越ししたばかりで、本装置の立ち上げから行った。幾多のハプニングに見舞われながらも、宇宙で有機物生成の下地として使われ、触媒としても働く酸化物ナノ粒子の再現実験を予定通り行った。また、一酸化炭素やメタンガス雰囲気中でナノ粒子表面上に有機物が生成する過程を明らかにする研究を同時に推進した。

隕石の分析から、宇宙で作られた複雑な分子が初期地球にもたらされた事が分かっている。アセチレンやメタンなどの単純な炭化水素分子は、晩期星周囲のガス相で最初に形成することが観測から明らかであるが、その後の反応プロセスは未知である。ナノ粒子を触媒として用いた本実験は、初期の炭化水素分子からより複雑な有機分子の生成までの空白を埋めるきっかけになると期待される。複雑な分子や有機物の生成は、希薄な宇宙のガス相ではフラックスが小さく起こり難いためにナノ粒子表面での反応が欠かせない。従来、単なる基板として取り扱われてきたナノ粒子の、触媒としての働きに焦点をあてることで、宇宙における分子進化の研究に新たな視点を持ち込む実験である。

学際センター所有の電子顕微鏡をはじめとした分析機器の使用により、6月におこなった実験の解析が進み、議論を集中的に行うことができた結果、Meteoritics & Planetary Scienceに論文を投稿する運びとなった。

現地は氷点下の非常に寒い日が続き、体調を崩したが、2報の論文の議論が進みほぼ仕上げられ、今後の研究の芽も作ることができたことから、非常に有意義な滞在になった。

J. A. Nuth III博士(受け入れ研究者)の宇宙化学実験グループが入った新しい建物、Building34(写真左)と世界に一台の手作りの実験装置Smoke Generator(写真右)。

平成20年度 若手研究者 国際共同研究支援プログラム 成果報告書

ピッツバーグへの派遣

氏名 村口 正和
職名 教育研究支援者
指導教員名 遠藤 哲郎
国外出張報告 出張期間:2009年3月15日~22日
出張場所:アメリカ合衆国 ピッツバーグ

この度、3月15日から22日までの期間、20年度若手研究者国際共同研究支援プログラムの支援を受け、海外研究者との共同研究の端緒を開くことを目的として、私の研究分野である量子ダイナミクスの研究者が多数出席する、アメリカ物理学会へ派遣して頂いた。アメリカ物理学会は、例年、数千件以上もの発表が行われる非常に大規模な学会であり、写真に示す様に、会期中は会議場内にとどまらず至る所で活発な議論と意見交換が行われる。この場にて私の研究成果をアピールすることで、海外研究者との共同研究へ発展させることを目指した。幸いにも、発表を聞いて頂いた複数の研究者の方に私の研究に興味を持って頂き、「半導体デバイス界面におけるトンネル現象のダイナミクス」における諸現象について活発な意見交換を行うことができた。今後の研究方針にとって非常に有益な知見を得ることができたと同時に、海外共同研究への端緒を開くという目的の一部は達成出来たと考えている。

平成19年度 若手研究者 国際共同研究支援プログラム 成果報告書

University of Houstonでの研究生活

氏名 丸山 美帆子
専攻 理学研究科地学専攻 博士課程後期3年
指導教員名 塚本 勝男
研究テーマ 46億年昔の結晶成長
研究成果 「Chiral and Achiral Mechanisms of Regulation of Calcite Crystallization」
M.Mayuyama, et.al
Crystal Growth & Design,2009,9(1),127-135
国外出張報告 出張期間:2008年3月1日~15日
出張場所:University of Houston, U.S.A

この度3月1日~15日まで、19年度若手研究者国際共同研究支援プログラムの支援を受け、University of Houstonにて2週間の研究生活を過ごして参りました。University of Houstonは、Houstonの中心地から車でおよそ15分の場所に位置しています。大学構内は大変安全で、とても美しいキャンパスです。キャンパス内に大学ホテルがあり、そこから毎日研究室に通うという生活をしていました。鎌状赤血球症について研究しているポスドクの女性と同室で過ごし、アメリカでの研究生活を肌で感じることができました。

この海外出張の最大の目的は、結晶成長の分野で著名なPeter G. Vekilov教授のもとで、最新の結晶成長研究に触れ、私たちのこれまでの研究についての議論を深めることでした。私は主に、自分の論文について共著者であるVekilov教授と議論を行い、内容の改訂を行いました。本論文(タイトル“Chiral and achiral mechanisms of regulation of calcite crystallization”)は、無機鉱物である方解石とアミノ酸の相互作用に関するもので、バイオミネラリゼーションという分野に位置づけられる研究です。この研究により、ゆっくりと成長する方解石の表面では、アミノ酸のD体とL体の選択吸着が起こることや、方解石の成長駆動力が小さい領域では、アミノ酸は方解石の成長を促進させることなどが明らかになりました。現在、この論文はCrystal Growth & Design誌に投稿し、Revise中です。

Houstonに滞在中、私はVekilov教授らの開催するホームパーティに参加する機会に恵まれました。参加者はみなVekilov教授と関係の深い方々で、Sellの研究者の方や、Rice Universityの教授夫妻などもいらっしゃいました。みんなでロシアの伝統料理とお酒を楽しみながら、自分たちの研究や生活、最近あった面白い話などに花を咲かせ、アットホームで楽しい雰囲気を過ごしたものです。研究の新しい発想などは、何も研究の場だけでなく、こうした自由な場所でも生まれ得るものだと実感しました。

この滞在中、議論の末に論文の質が大変向上しただけでなく、海外での研究生活や研究者同士の交流の雰囲気を肌で感じることができました。私にとって、大変実りの多い2週間でした。

  • 写真1 University of Houstonのキャンパスとダウンタウン)

  • (写真2 ホームパーティの様子。左から3番目が筆者)

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