東北大学
学際科学フロンティア研究所

FRIS Interviews #04

FRIS Interviews#04後編

  • 田村 光平Kohei Tamura

    人類学Anthropology

  • 常松 友美Tomomi Tsunematsu

    睡眠脳科学・電気生理学Sleep Research, Electrophysiology

  • 當真 賢二Kenji Toma

    宇宙物理学Astrophysics

学際科学フロンティア研究所は「学際的研究の開拓・推進によって新たな価値を創出し、人類社会に貢献すること」を目的としています。そのコンセプトを所属研究者によって語り、考える企画が本連載『ボーダーを越えて』です。

それぞれの研究人生に触れながら、「自分が体験した学際的な活動を語っていただきます。学際フロンティア研究所(以下、学際研)の理念と実態を浮き彫りにすると同時に、学際研のメンバーが対話を通じてこれからの組織のあり方を考える場です。

学際研究の「技術」

田村
去年、當真さんが発表されたことがありました。あの時、全然スケールが違うと感じました。
當真
5次元、6次元の話ですね。
常松
時間を合わせて4次元までしか理解できないです。5次元とはなんですか?
當真
空間3次元は高さ、幅、奥行きがありますがそれがもう一個あるということです。絶対に我々は分からないんだけど、ヒントがあると思われていて、それを探しています。地球にはなく宇宙にしかないかもしれない。極限的な状態には他の次元があるのかもしれない。地球上で確かめられていない次元があるのかもしれない。テレビゲームやアニメを2次元というじゃないですか、あの中の人達からすれば3次元を知らないのと同じです。重力波は空間4次元を伝わっているものだとします、3次元には本当の速さじゃなくて、ちょっと遅くなった速さがあると証明されたら、知らない次元があるという可能性があるという。
田村
既にある理論が正しいとして、どうやって証明するんですか?重力波が観測されたとして、理論が正しいかどうかというのは。
當真
時空4次元の理論だと重力波は必ず光速で進みます。5次元だと遅くなりえます。今回の観測では光と重力波が同時に出たので、「まぁ、5次元の大きな兆候はなさそうかなぁ」というのが現状です。でも、まだまだ分かりません。誰も見たことないものを見たいというのはありますね。 常松さんは、ネズミを寝かせる技術がすごいと聞きました。世界でも凄く少ない人が持つ技術だそうですね。
常松
マウスの頭を固定した状態で寝かせられるのは、世界でもそんなに居ないと思います。そのくらい一番の強みといってもいいくらいです。オペの技術もそうなのですが、普通の人がやると寝ないんです。それを寝かせるんです。1週間くらいかけて、慣れさせ、怖くないよって教えるんです。寝かすだけはそれほど難しいことではないのですが、レム睡眠とノンレム睡眠の両方を観察したいんです。ストレスをかけるとレム睡眠って起こりにくいようなのです。他の人がやるとなかなかレム睡眠に入らない。
常松 友美Tomomi Tsunematsu

学際科学フロンティア研究所 助教
筑波大学第二学群生物学類卒。総合研究大学院大学生命科学研究科修了。博士(理学)。生理学研究所・名古屋大学日本学術振興会特別研究員(PD)、英ストラスクライド大学日本学術振興会海外特別研究員・博士研究員を経て、2017年より現職。専門は睡眠脳科学。

當真
その技術って勝手に身についたんですか?
常松
分からないです。どうやっているのか自分で教えられないんですよ。「どうやっているんですか?」と聞かれてよく見せてあげるんですが、他の人がやってもなかなか再現できない。
田村
僕の場合、職人技はないですね。むしろ職人技をなくして、多くの人が使えるようにしようとしている側なので。
當真
田村さんは知り合い多いですよね。えらい先生にいきなりメールして呼んできたり(笑)FRISにいると色々この大学とこの大学でイベントするからコーディネートしてくれとよくいわれますが、田村さんに言えばいいんですよ(笑)

色々な人の集まる場所で何をするか?

田村
色んな人がいっぱい居るというところですね。
常松
変な人が多いのが落ち着きます。みんな人と違うことをやりたがっているので、変な人が多いです。自分も変な人だと自覚していますし、変な人が好きなので、凄く楽しいです。あと、ノリが良いというか、一緒に研究やろうという話を口だけでなくすぐに実行するので、それは凄いなと思いますね。
當真
優秀な学生がここに集まってくるってこともメリットですね。全学で選抜した人たちに奨学金を出していて、彼らと一緒にセミナーをやっています。
當真 賢二Kenji Toma

学際科学フロンティア研究所 助教
京都大学大学院理学研究科卒。博士(理学)。国立天文台研究員、米ペンシルベニア州立大学研究員、大阪大学での日本学術振興会特別研究員SPDを経て、2013年より現職。平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞。専門はブラックホール周辺で起こる高エネルギープラズマ現象の研究。特にブラックホールが駆動するプラズマ噴流(ジェット)のメカニズムを調べており、それは重力波、宇宙論、銀河進化、最新観測、数値シミュレーション研究などと関連して進んでいる。

田村
欲をいうと我々と一緒に研究やプロジェクトをしたいですね。
常松
星陵キャンパスから遠いので一度もセミナー行ったことがないです。
當真
遠いのはありますね、皆バラバラなのでなんとかならないかな。教員会議で月に一度集まるんですけど。もう少し全学がコンパクトになれば、もっと色々できそうですよね。
常松
後は、採用してくれたことが良いところですね。もちろんこの後テニュア(終身雇用)になれば最高ですけど。生物系って頑張っても3年に1本良い論文が出るくらいなんです。この5年間で何か良い論文が出れば次にいけますが、チャレンジングなことして失敗すると次がなくなりますね。
當真
それだと7年くらいは欲しいですね。任期があることにもそれなりのメリットがあるので、若い時に任期なしにしてくれとはいいませんが、もう少し伸ばしてもいいかもしれませんね。任期があるから色んな所に行けるというのがあります。

学際の未来

田村
「学際」って時間が経つと「学際」じゃなくなりますよね。
常松
そうすると、どんどん学問が増えていくってことですか?
當真
そうなれば良いですけど、滅びるのもありますよね。なりきれないのもあるので。学際の未来が分からないからやっているとも思いますね。学際という方法は今後も残っていくと思います。
常松
なくならないですよね。
田村
「学際」というものはなくならないんじゃないですか。でも、ある分野がずっと学際的かというとそういうわけではなくて、例えば我々が教科書とか書くじゃないですか。それを学部生から読んでいたら、その分野は学際ではなくなりますよね。だから新しいものが沢山できていく。
田村 光平Kohei Tamura

学際科学フロンティア研究所 助教
名古屋大学情報文化学部卒。東京大学大学院理学系研究科修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員、ブリストル大学博士研究員を経て、2016年から現職。専門は人類学、文化進化。とくに最近は、考古遺物の定量的解析と、そうした手法を誰でも使えるようにするための研究環境の構築に取り組んでいる。

當真
FRISは研究室にそこまで根をおろしていないことのメリットはあります。いい意味でふわふわしている。先生ともガッチリというわけではないです。今ある学問の柱もそんなに順風満帆ではないですし、学際研究がその手助けをできれば「してやったり」ですね。

[2017年12月5日]

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