トピックス
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お知らせ2017.04.28
学際科学フロンティア研究所特別企画 大西卓哉宇宙飛行士ミッション報告会 in 宮城県仙台市 —国際宇宙ステーションから考える地球と生命のフロンティア— 2017年4月22日(土)、「大西卓哉宇宙飛行士 ミッション報告会 in 宮城県仙台市 ― 国際宇宙ステーションから考える地球と生命のフロンティア ―」が仙台市若林区文化センターにて開催されました。この企画は、宇宙を用いた研究活動を広く一般の方々に知ってもらうことを目的に、学際科学フロンティア研究所特別企画として実施しました(実施担当者:津村耕司助教)。 この報告会では、平成28年7月から10月までの約4ヶ月間、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在した大西卓哉宇宙飛行士をお招きし、ISSでの生活の様子をはじめ、ISSで行われたマウス飼育や小型衛星放出などに関する活動について報告していただきました。また、大西宇宙飛行士の活動を地上から支えたJAXAの職員を交えたトークセッションもあり、さらに2017年にISSに長期滞在する予定の金井宣茂宇宙飛行士もサプライズ登場するなど、日本の有人宇宙活動について宇宙飛行士をはじめとする関係者から生の声を聞く貴重な機会となりました。質問コーナーでは、大西宇宙飛行士が壇上から客席に降りて会場から出た多くの質問に答えていました。 またこの報告会は、東北大学における宇宙研究を市民の皆様に知って頂く良い機会ともなりました。具体的には、ISSで将来予定されているマウスを用いたストレス耐性実験について、山本雅之教授(東北メディカル・メガバンク機構長)から紹介があったほか、過去にISSで行った研究の成果報告として、無重力環境下での植物生育について、東谷篤志教授(大学院生命科学研究科長)から、また、ISSから観測した大気発光現象について、坂野井健准教授(大学院理学研究科附属惑星プラズマ・大気研究センター)から、それぞれ発表がありました。加えて展示コーナーでは、今までに東北大学が関わってきた宇宙に関する研究の展示を行いました。 宇宙という舞台は、理学・工学のみならず、文系・理系の枠をも超えた、広く「学際的」な研究活動が行われている場です。人類にとってその最先端の活動の場であるISSでの活動について、広く市民の皆様に知っていただく機会を当研究所が主催し、実施できたことを嬉しく思います。 最後に、主催者といたしまして、共催の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、J:com、日本宇宙少年団仙台たなばた分団、東北大学各部局に感謝申し上げます。 ■共催団体のレポート: 理学研究科広報室 東北メディカル・メガバンク機構 日本宇宙少年団 ■マスコミ報道: NHK 仙台放送 ■東北大学 開催レポート(英語) 大西宇宙飛行士インタビュー(英語)
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受賞2017.04.27
『平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞』 本研究所から3名が受賞 受賞日/2017年4月11日 学際科学フロンティア研究所新領域創成研究部の鈴木真介助教、大学保一助教、當真賢二助教の3名は、『平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞』を受賞しました。本賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に対して、文部科学大臣より授与されるものです。表彰式は、平成29年4月19日(水)に文部科学省にて行われました。 受賞者3名の受賞対象の業績は、以下の通りです。 鈴木真介 助教「ヒトの社会行動を支える脳計算メカニズムの研究」 大学保一 助教「DNA複製とゲノム安定性制御の研究」 當真賢二 助教「偏光によるブラックホールジェットの研究」 左から、大学保一助教、當真賢二助教、鈴木真介助教 文部科学省: 平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者の決定について
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受賞2017.04.27
鈴木 真介 助教(新領域創成研究部) 「ヒトの社会行動を支える脳計算メカニズムの研究」 平成29年度 文部科学大臣表彰若手科学者賞 新領域創成研究部の鈴木真介助教は、『平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞』を受賞しました。受賞の対象となった研究業績の概要は、以下の通りです。 我々ヒトは社会的動物であり、社会の中で他者と陰に陽に相互作用しながら生きています。では、その高度な社会性はどのような脳の計算(情報処理)に支えられているのでしょうか?ヒトを対象にした認知神経科学の進展により「何らかの形でヒトの社会性に関わる」脳領域がリストアップされつつありますが、それぞれ脳領域が「どのような計算を担っているのか?」はよく分かっていませんでした。鈴木真介助教は、一連の研究において、機能的MRIを用いた非侵襲的脳イメージング法を強化学習、ベイズ推定といった機械学習・計算論的手法と組み合わせることで、ヒトの社会行動において「どのような脳領域がどのような計算処理を担っているのか」を明らかにしました。具体的には、「他者行動の予測(Suzuki et al., 2012)」、「他者との合意形成(Suzuki et al., 2015)」について、実験中のヒト被験者の行動パターンを再現し得る数理モデルを構築し、そのモデルを機能的MRIで測定した脳活動と比較検証することで、「脳のどの領域でどのような計算処理が行われているのか」を解明しました。 主要論文: “Learning to simulate others' decisions.”Shinsuke Suzuki, Norihiro Harasawa, Kenichi Ueno, Justin L Gardner, Noritaka Ichinohe, Masahiko Haruno, Kang Cheng, Hiroyuki Nakahara. Neuron, Vol. 74, p1125-1137, 2012. DOI: 10.1016/j.neuron.2012.04.030 “Neural mechanisms underlying human consensus decision-making.”Shinsuke Suzuki, Ryo Adachi, Simon Dunne, Peter Bossaerts, John P. O’Doherty.Neuron, Vol. 86, p591-602, 2015DOI: 10.1016/j.neuron.2015.03.019 略歴 1980年、兵庫県西宮市生まれ。 筑波大学大学院システム情報工学研究科修了・博士(社会経済)。 理化学研究所、カリフォルニア工科大学を経て、2016年より現職。
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受賞2017.04.27
大学 保一 助教(新領域創成研究部) 「DNA複製とゲノム安定性制御の研究」 平成29年度 文部科学大臣表彰若手科学者賞 生物は組織や個体を形成、および維持するため最少ユニットである細胞の分裂を繰り返します。その度に、ゲノム情報の担体であるDNAは限られた時間内に正確に複製される必要があります。しかし、DNA複製は無限に同じクォリティで行われるものではなく、細胞の老化と共にその機能不全のリスクが高まり、DNA複製機構の破綻による細胞死やゲノム情報の不安定化(突然変異や染色体異常)のリスクが高まります。このようなDNA複製による変異は生物集団に多様性を生む仕組みであり、生物進化の原動力ですが、ヒトを含む多細胞生物においては、組織、および器官の機能不全の原因となるとともに、がん細胞のような体内の恒常性から逸脱した細胞集団を生み出す原因にもなってしまいます。大学保一氏は、ゲノム情報の安定性を維持する機構の解明に向け、どのようにDNA複製機構がゲノム上の様々な障害に対応するのか、また、突然変異・染色体異常が生成される機構を探ることをテーマとして研究をおこなってきました。 DNA損傷部位のコピーは後回しにされる!? 紫外線などによって誘発されるDNA損傷はDNA合成酵素:DNAポリメラーゼによる反応を阻害しますが、細胞には、DNA損傷を乗り越えて合成反応(損傷バイパス合成)を行う仕組みが備わっています。具体的には、DNA損傷を鋳型としても反応を継続できる特殊なポリメラーゼによる合成や、姉妹染色体を代わりに鋳型とした合成(テンプレートスイッチング)によるものです。損傷バイパス合成は、DNA複製装置の進行に伴って起こる現象と考えられていましたが、氏は、出芽酵母を用いて、その反応が複製装置の進行とは切り離されて、後回しにするかのように起きることを明らかにしました(Daigaku et a.l Nature, 465, 951-955, 2010)。この結果は、1960年代より提唱されたモデル ”post-replication repair” を直接的に証明し、DNA損傷が存在してもゲノム複製が非常に柔軟に進行しうることを実証した画期的な研究として評価されました。 全ゲノムを網羅してDNAポリラーゼの機能を解析する実験系の確立 真核生物には15種類のDNAポリメラーゼが存在し、それぞれの正確性は異なるので、ゲノム複製におけるDNAポリメラーゼ間での分業は、突然変異生成という観点からも重要な問題です。氏は、その問題の包括的な解明へのアプローチとして、個々のDNAポリメラーゼの合成領域を全ゲノムに渡り同定する実験技術を確立し、ゲノム複製の大半を担う2つのポリメラーゼ(Polδ、Polε)の機能解析を行いました(Daigaku et al Nat. Struct. Mol. Biol. 22 192–8 2015)。その成果として、Polδによりラギング鎖合成、Polεよるリーディング鎖合成が全ゲノム領域に共通して行われることを示すと同時に、複製開始、終末領域や複製困難な領域においては、柔軟に複数のDNAポリメラーゼが使い分けられていること明らかにしました。今後は、この実験系を応用した研究により、莫大な分子であるゲノムDNAを効率的に複製する上で必要な、DNAポリメラーゼ間の協調システムへの理解がより深まると期待されます。 略歴 東北大学理学部卒業、東北大学生命科学研究科修了、Cancer Research UK London Research Institute研究員、英国サセックス大学Genome Damage and Stability Centre 研究員、日本学術振興会海外特別研究員を経て、東北大学学際科学フロンティア研究所・新領域創成研究部に2015年4月に助教として着任。
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受賞2017.04.27
當真 賢二 助教(新領域創成研究部) 「偏光によるブラックホールジェットの研究」 平成29年度 文部科学大臣表彰若手科学者賞 新領域創成研究部の當真賢二助教は、『平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞』を受賞しました。受賞の対象となった研究業績の概要は、以下の通りです。 ブラックホールは強い重力によって光さえも脱出できない空間のことをいいます。2016年、アインシュタインが予言した重力波が初検出され、それによってブラックホールの存在が確実になりつつあります。ブラックホールと考えられている天体の中には、光速の99.99%もの極限的な速度でプラズマを噴出させているものがあります。これはジェットと呼ばれ、それがブラックホールによってどう駆動され、どう輝くのかは宇宙物理学における最大の謎の一つとなっています。宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストも、ブラックホールジェットが引き起こすものと考えられています。 當真賢二助教は、ジェットからの光の振動方向の偏り(偏光)が謎の解明につながることに早くから着目し、研究を行ってきました。氏は世界に先駆けて、ジェットからのガンマ線の直線偏光度分布を理論予測し、それに基づいていくつかの衛星計画を推進させました。その後、実際に偏光が検出され、ジェットの有力な理論モデルを一つに絞り込めることを示しました。また円偏光を初検出した国際チームに加わり、そのデータをもとに、放射領域で電子が極めて非等方であるという新説を提唱しました。 本研究成果は、世界で新たに複数の偏光観測計画が立てられる契機となりました。「高エネルギー偏光天文学」という新しい分野を形成し、学術の発展に大きく寄与すると期待されます。 略歴 1979年、大阪府大阪市生まれ。 2008年、京都大学理学研究科修了、博士(理学)。 国立天文台、米ペンシルバニア州立大学、大阪大学を経て、2013年12月より現職。 第25回日本天文学会研究奨励賞(2014)、第8回日本物理学会若手奨励賞(2014)受賞。
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受賞2017.04.25
山本 英明 助教(新領域創成研究部) 『トーキン財団奨励賞』を受賞 受賞日/2017年3月8日 新領域創成部の山本英明助教が、公益財団法人トーキン科学技術振興財団の第27回トーキン財団科学技術賞の奨励賞を受賞しました。 本賞は宮城県内の大学等で工学分野の研究をおこなう若手研究者の研究成果に対し、贈賞するとともに奨励金を支給するもので、山本助教の受賞対象となった研究業績は「単一細胞パターニングに基づく人工神経回路構築のための表面マイクロ加工技術の開発」です。 贈呈式は平成29年3月8日に行われました。 公益財団法人トーキン科学技術振興財団
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研究会等のお知らせ2017.04.20
「Physiological importance of mechanotransductionmediated by Piezo channels」(PDF) 講師:野々村恵子 博士(基礎生物学研究所・初期発生研究部門助教) 主催/学際科学フロンティア研究所 会場:片平キャンパス 生命科学総合プロジェクト棟1階103会議室 *MAP 片平キャンパス〔D-04〕
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研究会等のお知らせ2017.04.19
大西卓哉宇宙飛行士ミッション報告会 in 宮城県仙台市 ―国際宇宙ステーションから考える地球と生命のフロンティア―(PDF) 主催/東北大学学際科学フロンティア研究所 会場:仙台市若林区文化センターホール [ 参加無料・事前申込制 ]定員:650名 ※先着順 申込方法:フォームから必要事項を記入の上、お申込ください。 詳細・問合せ先はこちらをご覧ください。
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会議発表・論文・出版2017.04.12
中山 勝文 准教授(新領域創成研究部) 『Particle and Fibre Toxicology』に論文掲載 掲載日/2017年4月11日 新領域創成研究部の中山勝文准教授の研究グループは、ナノ粒子の相乗的な炎症誘導作用を発見しました。これまでナノ粒子の毒性研究の多くは、各々の単独粒子について行われており、複数の異種粒子による相加的あるいは相乗的な毒性作用についてはよく判っていませんでした。そこで本研究において、世界的に最も産生量の多いナノマテリアルであるアモルファスシリカ(二酸化珪素)ナノ粒子と二酸化チタンナノ粒子の混合物の炎症作用について解析した結果、これらのナノ粒子は低用量で相乗的に急性肺炎を誘発することをマウス実験により明らかにしました。この成果は、複数のナノマテリアル暴露によって低用量であっても予期せぬ炎症が起きうる危険性があることを示唆しており、今後のナノマテリアルの毒性評価の一助になると考えられます。 この成果は2017年4月11日に粒子毒性学専門誌「Particle and Fibre Toxicology」(IF: 8.649)の電子版に掲載されました。本研究は、文部科学省研究費補助金、公益財団法人 内藤記念科学振興財団、および公益財団法人 住友財団の支援を受けて行われました。 論文情報: Tsujita, M., Morimoto, N., and Nakayama, M. "SiO2 and TiO2 nanoparticles synergistically trigger macrophage inflammatory responses." Particle and Fibre Toxicology. 14, 11, 2017. DOI:10.1186/s12989-017-0192-6
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会議発表・論文・出版2017.04.11
奥村 正樹 助教(新領域創成研究部) 『Angewandte Chemie International Edition』に 論文掲載、および報道発表 プレスリリース/2017年4月11日 新領域創成研究部の奥村正樹助教は、東海大学、東北大学多元物質科学研究所、および大阪大学の研究者との共同研究において、天然のインスリン(ウシ膵臓由来)に含まれるジスルフィド結合の一つをジセレニド結合に置換した新規人工インスリン「セレノインスリン」の化学合成に成功いたしました。これにより、糖尿病治療において、体内での薬効が長時間持続する新規インスリン製剤としての応用が期待されます。 本研究成果は、4月10日付でドイツの国際化学誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に掲載されました。 論文情報: Kenta Arai, Toshiki Takei, Masaki Okumura, Satoshi Watanabe, Yuta Amagai, Yuya Asahina, Luis Moroder, Hironobu Hojo, Kenji Inaba and Michio Iwaoka, "Preparation of Selenoinsulin as a Long-Lasting Insulin Analogue", Angewandte Chemie International Edition, 56, 1–6, 2017 DOI: 10.1002/anie.201701654 プレスリリース: 東北大学 多元物質科学研究所