東北大学
学際科学フロンティア研究所

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曹 洋 助教、増本 博 教授『Applied Physics Letters』誌に論文掲載

2022年2月22日『Applied Physics Letters』誌に論文掲載

2022.02.25

トンネル型磁気誘電効果の応用化に向けた理論と実験の新たな展開


磁電効果(ME: Magnetoelectric Effect)は、そのマルチフェロイックな特性から、磁界センサー、アンテナ、記録媒体などの多機能デバイスへの展開が検討され、多くの研究がなされています。従来のME材料の理論や作製技術に基づき、様々なヘテロ構造を持つ、圧電相と磁歪相とが界面接触した層状、柱状、粒状ナノ構造など多くのME材料が挙げられます。
 
一方、2014年、先端学際基幹研究部の増本 博教授の研究グループにより、全く新しい原理で室温で動作する磁気誘電効果『トンネル磁気-誘電(TMD: Tunnel Magneto-Dielectric effect)効果』が発見され、多機能性磁気誘電デバイスの応用化への新たな道が開かれました。TMDの起源は、新しいスピン依存電荷分極量子効果に基づく現象であると解明し、TMD効果の発見以来、その特性を向上させるために多くの実験的研究を行ってきました。しかし、その時点では、TMD効果の向上のための理論的な設計指針はまだ確立されておらず、その特性限界さえもまだ理論的に解明されていませんでした。
 
今回、新領域創成研究部の曹 洋 助教と増本 博 教授(先端学際基幹研究部)の研究グループは、(公財)電磁材料研究所の小林 伸聖 主席研究員らと共に、TMD効果の実験・理論的研究を進め、これまで不明だったTMD効果 (Δε′/ε′) の発現はグラニュール磁性体固有のスピン偏極値 (PT) と外部正規化磁化 (m) とに起因することを明らかにしました。具体的には、TMD効果は Δε′/ε′=2PT2m2 で現すことができることを見出しました。この研究成果は、材料中のナノ粒子の粒状分布の調整に重点を置いた様々なナノ複合材料への設計指針を提供するだけでなく、TMD効果を基とする磁気誘電特性の高性能化を促進する指針を示し、応用化を可能にします。
 
本研究成果は、2022年2月22日付けで「Applied Physics Letters」に掲載されました。
 
論文情報:
Yang Cao*, Nobukiyo Kobayashi and Hiroshi Masumoto
"Tunnel magnetodielectric effect: Theory and experiment",
Applied Physics Letters 120, 082901 (2022)
DOI: 10.1063/5.0077879
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0077879
 
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