東北大学
学際科学フロンティア研究所

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電気回路の基本要素 -インダクタ- の「ねじれ」をほどく ~電子スピンの量子相対論効果で電力制御研究に新展開~

2022年4月7日『Physical Review Letters』誌に論文掲載、および2022年4月14日プレスリリース

2022.04.14

インダクタは、抵抗やキャパシタと並んで、様々な電子機器で幅広く利用される電気回路の基本要素です。通常インダクタは、ねじれた導線(コイル)で実現され、導線を流れる「電流の時間変化」を「起電力」に変換する機能(インダクタンス)を示します。ごく最近、量子現象に基づく「創発インダクタ」が提案・実証され、コイルに基づく従来技術が抱える原理的な制限(インダクタンスの大きさのコイルサイズ依存性等)を克服する試みが始まりました。ここでは、らせん磁性金属という、ねじれた磁気をもつ特殊な材料が用いられていました。
 
東北大学学際科学フロンティア研究所の山根結太助教、電気通信研究所の深見俊輔教授、日本原子力研究開発機構の家田淳一研究主幹は、量子相対論効果である「スピン軌道相互作用」により、創発インダクタ機能が、より普遍的な(空間的に一様な磁気構造を持つ)磁性材料で生じることを理論的に明らかにしました。本成果により、創発インダクタは特殊な材料、狭い温度・周波数帯に限られた機能ではなく、様々な材料系で出現しうるものであることが明らかになり、量子現象による電力制御などへの展開も期待されます。また、本原理によれば、ゲート電圧によってスピン軌道相互作用を制御することで、従来のコイルインダクタでは必要な機械動作部品を用いない可変インダクタへの展望も開けます。今後、この原理の実証研究を推し進めることで、電子スピンを介したエネルギー変換現象に基づく、次世代の基盤量子技術の開発が切り開かれていくものと期待されます。
 
本研究成果は2022年4月7日付(米国時間)で、米国物理学会誌「Physical Review Letters」にてオンライン公開されました。


本研究で予言されたスピン軌道創発インダクタと、これまで知られていたインダクタの比較。LとCはそれぞれ、コイルのインダクタンスとキャパシタンス。

論文情報:
Yuta Yamane, Shunsuke Fukami, and Jun’ichi Ieda
Physical Review Letters
"Theory of Emergent Inductance with Spin-Orbit Coupling Effects"
DOI: 10.1103/PhysRevLett.128.147201
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.128.147201
 
プレスリリース:
東北大学
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/04/press20220414-01-inductor.html
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
https://www.jaea.go.jp/02/press2022/p22041401/
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