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野田 博文 助教(新領域創成研究部)
2017.10.30
野田 博文 助教(新領域創成研究部)
『Journal of Astronomical Telescopes,
Instruments, and Systems』に論文掲載
掲載日/2017年10月27日
2016年2月17日に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」搭載の「精密軟X線分光装置 (Soft X-ray Spectrometer; SXS)」は、衛星軌道上で従来の観測装置より20倍以上高い分光性能を達成しました。この性能は、センサー温度を50 mKという極低温で安定させ、入射するX線光子を熱に変えて検出することで実現します。そのために、複数の冷凍機と超流動ヘリウムの蒸発を組み合わせた冷却システムを用います。しかし、種子島宇宙センターからH2Aロケットで「ひとみ」を打ち上げる間、冷凍機とヘリウムの蒸発をともに中断しなければならず、打ち上げ時の温度が高すぎると、軌道投入後に許容温度を超えてしまう恐れがありました。
そこで、新領域創成研究部の野田助教らは、本論文にまとめられた研究において、SXS内部の伝導・放射熱輸送を考慮した熱数学モデルを構築し、地上試験の結果を用いて較正し、軌道上で許容温度を超える打ち上げ時の上限温度を数値計算で割り出しました。こうして得られた上限温度は、実際のロケットの打ち上げ条件の一つに設定されました。打ち上げ後は、計算結果と軌道上温度の比較から冷却システムの動作検証を行い、健全性を確認しました。
本研究成果は、2017年10月27日付で科学誌「Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems」に掲載されました。