東北大学
学際科学フロンティア研究所

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児島 征司 助教(新領域創成研究部)

2017.08.08

児島 征司 助教(新領域創成研究部)

『Journal of Bacteriology』に論文掲載、および報道発表

プレスリリース/2017年8月8日


新領域創成研究部の児島征司助教は、本学生命科学研究科の木幡光氏(博士後期課程学生)、高橋秀幸教授と共同で、シアノバクテリア(酸素発生型の光合成を行う細菌群)のモデル種Synechocystis sp. PCC 6803の最も外側の膜構造である外膜(図)の透過性を解析し、外膜が有機物の透過を著しく制限する一方で、無機イオンに対しては高い透過性を示す特殊な性質を持つことを明らかにしました。この特性は、生育に必要な無機イオン類を高効率で細胞内へ取り込みつつ、自ら合成した栄養分である有機物を外に漏らさないために最も適した性質といえます。
アノバクテリアは自然環境中の有機物生産を担う重要な光合成生物種の一つであり、また植物葉緑体の起源と考えられています。本グループは、シアノバクテリアの外膜の主要構成成分は葉緑体成立の初期には既に失われており、物質透過機能をもつ全く別のタンパク質が原始的葉緑体の外膜の主要成分となっていることを昨年度の研究で突き止めています。これらの事実から、シアノバクテリアの外膜の物質透過性を大きく改変し、栄養分となる有機物を外に取り出す機構を獲得することが葉緑体成立の工程の一つであったことが見えてきます。本成果は、米国微生物学会が発行する学術誌 Journal of Bacteriology オンライン版に7月10日付けで掲載されました。

図 Synechocystis sp. PCC 6803の細胞表層構造(左)と外膜の物質透過機構(右)。無機イオンのみ透過する蛋白質が全体の約80%を占める一方、有機物を透過できるものは約4%しか存在しない

論文情報:
Hikaru Kowata, Saeko Tochigi, Hideyuki Takahashi, Seiji Kojima, “Outer membrane permeability of cyanobacterium Synechocystis sp. PCC 6803: studies of passive diffusion of small organic nutrients reveal the absence of classical porins and intrinsically low permeability.”, Journal of Bacteriology
DOI:10.1128/JB.00371-17

プレスリリース:
東北大学  生命科学研究科

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