東北大学
学際科学フロンティア研究所

トピックス

市川幸平助教『The Astrophysical Journal Letters』に論文掲載

8月20日『The Astrophysical Journal Letters』に論文掲載

2018.08.21

重力波は、かの有名なアルバート・アインシュタインによってその存在が予言され、その100年後の2016年にアメリカのLIGOが太陽の数十倍程度の質量のブラックホールどうしの合体の直接検出に成功しました。その一方で、銀河の中心を見てみると、太陽の質量の約100万倍から100億倍の超巨大ブラックホールが銀河の中心に存在することが知られており、これらの超巨大ブラックホールどうしが合体する際にも重力波が出ることが予想されていますが、現在まだその検出には至っていません。
 
新領域創成研究部の市川幸平助教は、稲吉恒平 Simons fellow, Zoltan Haiman教授 (米コロンビア大学)と共同で、赤外線で非常に明るい超高光度赤外線銀河(Ultra-luminous Infrared Galaxies; ULIRGs)がほぼ衝突合体銀河であるという性質を利用し、実際の赤外線観測からULIRGsの個数密度を用いて、宇宙における超巨大ブラックホールの合体数を見積もりました。そしてブラックホールの合体数から予想される重力波の強さを、超巨大ブラックホールの衝突に感度をもつ重力波検出装置Pulsar Timing Array (PTA) から得られている最も強い重力波強度の上限値と比較しました。その結果、ULIRGsから予想される重力波は、現在PTAで得られている上限値を大きく超えてしまうことを発見しました。これは、銀河どうしが合体後も、中心にあるブラックホールどうしは宇宙年齢程度では必ずしも合体せずに、連星のように中心で回り続けている可能性を示唆しています。
 
本研究は、北海道大学、東北大学、名古屋大学によるコンソーシアム「次世代研究者育成プログラム」の支援により行われ、その研究成果をまとめた論文が2018年8月20日「The Astrophysical Journal Letters (ApJL)」のオンライン版に掲載されました。
 
論文情報:
Kohei Inayoshi, Kohei Ichikawa, and Zoltan Haiman, "Gravitational waves from supermassive black hole binaries in ultra-luminous infrared galaxies", The Astrophysical Journal Letters, Volume 863,  Number 2
 
PAGE TOP