東北大学
学際科学フロンティア研究所

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郭威博士、才田淳治教授『Journal of Materials Science』誌に論文掲載

3月8日『Journal of Materials Science』誌に論文掲載

2019.04.04

学際科学フロンティア研究所 先端学際基幹研究部の才田淳治教授グループの教育研究支援者の郭威博士(現:中国 華中科学技術大学)らは、不均質なオーダー領域が自己組織化する金属ガラスのCu47.5Zr47.5Al5に対して、繰り返し液体窒素冷却処理(Deep Cryogenic Cycling Treatment  (DCT))による構造若返り(未緩和状態への回復)現象を調べ、オーダー領域がDCTによって非加熱相変態(結晶化)を起こすことを見いだしました。また残存ガラス相は構造若返り挙動を示すことを考察し、あわせて機械的特性(塑性変形性)も向上することを見いだし、科学誌Journal of Materials Science(Springer)に発表しました。
 
金属ガラスはランダム原子配列構造を有しますが、適当な温度で熱処理すると、過剰に導入された空隙や原子配列の局所的な規則化(これらを広く構造緩和と呼びます)を起こすことが知られています。この構造緩和は機械的特性を著しく劣化させるため、その挙動の解明や改善方法が大きな課題となっています。本グループでは、種々の方法によって緩和状態を制御し、未緩和状態への回復(構造若返り)を目指す研究を行っています。郭博士らは、これまで代表的金属ガラスであるZr50Cu40Al10合金等において、繰り返し液体窒素冷却処理を行うことで構造若返り現象が起きることを報告してきました。今回の成果は、ナノオーダー領域が作製時に自己組織化するCu-Zr-Al合金系の不均質金属ガラスと呼ばれる材料を用い、繰り返し液体窒素冷却処理によるナノオーダー領域の非加熱結晶化とガラス相の構造若返りが複雑に発現する現象を見いだすとともに、それにともなう機械的特性(塑性変形性)の改善を報告し、その機構について考察しました。この成果は金属ガラスにおける新たな構造制御法を提案するものです。
 
本成果は東北大学学際科学フロンティア研究所 学際研究促進プログラム「ランダム原子配列構造制御の基礎科学と新材料・新機能創成への融合展開」(平成26~28年度)の支援を受けて行った研究の一部です。
 
また本研究は中国 華中科学技術大学との共同研究です。
 
掲載論文:
W. Guo, J. Saida, M. Zhao, S. Lü and S. Wu: J. Mater. Sci. : 54 (2019)8778-8785.
Non-thermal crystallization process in heterogeneous metallic glass upon deep cryogenic cycling treatment.
DOI: 10.1007/s10853-019-03515-7
 
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