東北大学
学際科学フロンティア研究所

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「葉緑体を分解する細胞内経路の研究」

2019.04.12

泉 正範 氏( 理化学研究所環境資源科学研究センター,前新領域創成研究部)

「葉緑体を分解する細胞内経路の研究」

平成31年度 文部科学大臣表彰若手科学者賞


植物は、太陽光のエネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を炭水化物に変換する「光合成」を行うことで成長しています。植物細胞の中で実際に光合成を担っている小さな細胞内器官が、葉緑体です。この葉緑体が細胞内で分解される現象は作物生産に深く関わる重要形質であることが知られていましたが、その経路の実体は不明でした。
 
泉正範助教は、葉緑体が壊される様子を生きた植物組織で観察できる顕微鏡イメージング技術を構築、駆使することで、葉緑体の一部がちぎり取られて運ばれる部分分解と、故障した葉緑体を丸ごと運んで除去する全分解、の2種が環境や成長段階に応じて使い分けられる分解経路を解明しました。さらに、この経路が細胞内自己分解システム「オートファジー」であることを証明しました。
本研究成果は、葉緑体の分解経路を人為的にコントロールすることで作物の生産性や品質を向上させようとする農学研究の実施を可能にしたと言えます。今後そのような応用研究がさらに発展していくことで、安定した食糧生産を支える新技術の創出につながることが期待されます。
 
略歴
1984年、福島県白河市生まれ。
2012年3月、東北大学大学院農学研究科修了、博士(農学)
2012年4月–2014年3月、日本学術振興会特別研究員 PD
2014年4月–2019年3月、東北大学学際科学フロンティア研究所 助教
2019年4月– 理化学研究所 環境資源科学研究センター 研究員
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