東北大学
学際科学フロンティア研究所

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線虫の発生過程、生殖細胞形成におけるDNA損傷バイパス機構の役割

2019年10月7日『DNA repair誌』に論文掲載、およびプレスリリース

2019.10.08

細胞の増殖とともに、生体の遺伝情報を記述されたゲノムDNAは正確、かつ、素早くコピーされる必要があり、あらゆる生物が精巧なDNA複製の仕組みを持ちます。DNA複製中には、様々な酵素が機能する必要があり、複製クランプは多くの酵素のDNA上での足場となり、酵素が効率良く機能するために必要不可欠です。複製クランプは、ドーナッツ状の構造をとり、DNA上を糸に通した輪の様に移動可能であり、複製クランプとともに、DNAを合成する酵素(DNAポリメラーゼ)がスライドし、スムーズなDNA合成が起きます。特に、複製クランプがユビキチン化された際には、DNA損傷を乗り越えて合成を行うDNAポリメラーゼが複製の場へ導かれます(図1)。しかし、この損傷乗り越えるポリメラーゼによるDNA合成は誤りがちであるため突然変異の原因となるので、我々の体内では適切に制御される必要があります。
 
本研究所新領域創成研究部の大学保一助教(生命科学研究科兼任)は、生命科学研究科分子遺伝生理分野・博士後期課程大学院生の邵震華氏及び東谷篤志教授、本研究所先端学際基幹研究部の丹羽伸介准教授らとともに、線虫Caenorhabditis elegansを用いて、DNA損傷乗り越えの機能が低下した際に、個体発生、生殖細胞形成に及ぼす影響を明らかにしました。この研究は、発生過程、組織形成・維持に伴う細胞分裂の際に、誤りがちなDNA合成が関与することを示すと同時に、多細胞生物でのDNA損傷乗越え機構の役割を解析する上で、線虫が有用なモデルと成ることを示しました。
 
本研究の成果は、 DNA repair誌2019年10月(vol. 82)に掲載され、10月7日に本学よりプレスリリースされました。
 
論文情報:
Z. Shao, S. Niwa, A. Higashitani, Y. Daigaku, "Vital roles of PCNA K165 modification during C. elegans gametogenesis and embryogenesis." DNA Repair, 82, 102688, 2019
DOI: 10.1016/j.dnarep.2019.102688
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568786419301491
 
プレスリリース:
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