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奥村 正樹 助教(新領域創成研究部)
2017.05.09
奥村 正樹 助教(新領域創成研究部)
『Structure』に論文掲載、および報道発表
プレスリリース/2017年5月4日
新領域創成研究部の奥村正樹助教は、東北大学多元物質科学研究所、熊本大学、および京都産業大学の研究者との共同研究において、X線結晶構造解析により、ジスルフィド結合開裂酵素ERdj5のクラスターの配向が異なる2つの結晶構造を解明しました。
細胞内には、正常なたんぱく質の高次構造形成反応を促進する仕組みがある一方で、構造異常のたんぱく質を速やかに分解・除去するための巧妙な品質管理システムも存在します。Protein Disufide Iso merase (PDI) ファミリーたんぱく質の1つであるERdj5は、哺乳動物細胞の小胞体中で誤って形成されたジスルフィド結合を還元し、小胞体関連分解と呼ばれる分解機構を促進させる役割を担っています。ERdj5の全体構造はそれぞれが複数のドメインから構成されている2つのクラスター(N末端側クラスターとC末端側クラスター)に分けることができます。両クラスターは、フレキシブルなリンカー領域で連結されていることから、動きに富むことが示唆されていました。しかし、この動きがERdj5の機能発現にどう関わるか不明だったため、詳細な分子機構の解明が求められていました。
さらに高速原子間力顕微鏡により、ERdj5のC末端側クラスターがダイナミックに動いている様子を一分子レベルで観察することに世界で初めて成功しました。さらに細胞を用いた実験により、ERdj5のC末端側クラスターの動きが、構造異常たんぱく質中のジスルフィド結合の還元および分解促進に重要な役割をもつことが強く示唆されました。
本研究の成果は、2017年5月4日(米国東部時間)に「Structure」のオンライン速報版で公開されました。