東北大学
学際科学フロンティア研究所

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柿沼 薫 准教授 『Environmental Research Letters』に論文掲載

2020年12月3日 『Environmental Research Letters』に論文掲載

2020.12.15

 洪水をはじめとした極端な気象現象による自然災害は、しばしば人を強制的に移動させます。このような人口移動は、人間の安全保障を脅かすため、未然に防ぐための対策が必要です。一方で、極端現象に伴う人口移動は、気候的要因に加え社会・経済的要因など様々な要因が関連する複雑な現象なため、特に全球規模ではそのパターンやメカニズムの解明は進んでいませんでした。
 先端学際基幹研究部の柿沼 薫 准教授(上海大学 准教授クロスアポイントメント)は、2008-2013年の洪水による人口移動のデータと、全球河川・氾濫原モデルのシミュレーション結果を組み合わせて、洪水に対する脆弱性が高い地域の特定を試みました。その結果、アフリカの国々では、小・中規模な洪水(洪水曝露人数に基づく)でも比較的多くの人が移動していることがわかり、洪水に対する脆弱性が高い可能性を示しました。さらに、各国の経済状況と洪水による人口移動の関係をみると、経済的に貧しい国では洪水による人口移動が起こりやすいこと、さらに経済が高レベルの国と中・低レベルの国では、人口移動数に大きな差があることがわかりました。これらの結果から、経済レベルが低い特にアフリカの国々では、洪水による人口移動が起こりやすく、対策が急務であることを提案しました。さらに本研究のように、社会科学と自然科学の情報の統合することで、極端な気象現象が社会へ及ぼす影響の評価に大きく貢献することを提示しました。
 
論文情報:
Kakinuma, K., Puma, M. J., Hirabayashi, Y., Tanoue, M., Baptista, E. A., and Kanae, S.,
"Flood-induced population displacements in the world."
Environmental Research Letters 15 (2020).
DOI: 10.1088/1748-9326/abc586
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