東北大学
学際科学フロンティア研究所

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市川幸平助教『Publications of the Astronomical Society of Japan』に論文掲載

2021年1月13日『Publications of the Astronomical Society of Japan (PASJ)』オンライン版に論文掲載

2021.01.18

 
 肉眼で観測可能な日食や彗星といった天文現象は、地球上の様々な地域で古くから記録されてきました。過去の人々は、こうした現象をしばしば重要な歴史的人物の生没や事件の前触れと解釈し記述しています。それゆえ、記述された過去の天文現象を分析し年代決定を行えば、それと関連付けられた過去の出来事の年代決定にも役立てることが出来ます。

 新領域創成研究部の市川幸平助教は、名古屋大学の村田光司特任助教、藤井悠里特任助教(現:京都大学助教)、早川尚志特任助教らと共同で、東地中海世界に栄えた13世紀ビザンツ帝国の皇妃エイレネ・ラスカリナの死去時期を、歴史史料に記述されている彗星記録の天文学的同定を根拠に再考しました。先行研究では、当時の政治的情勢を根拠として皇妃の死去は1239年と推測していました。しかし皇妃の死去の半年前に現れたという彗星記録が、1240年初頭のものであることを他地域の史料記述や彗星の軌道計算と光度変動計算によって確定することで、彼女の死去が1240年の夏頃であることを明らかにしました。これにより、同時期における帝国の対外政策についても従来の認識を一部改めることが出来ました。本研究は、天文学と歴史学のそれぞれの強みを生かした学際共同研究のモデルケースとして、今後さらなる展開が期待されます。
 
 本研究は、北海道大学、東北大学、名古屋大学によるコンソーシアム「次世代研究者育成プログラム」、名古屋大学高等研究院YLC共同研究助成、および東北大学学際研究共創プログラムの支援により行われ、その研究成果をまとめた論文が2021年1月13日「Publications of the Astronomical Society of Japan (PASJ)」のオンライン版に掲載されました。
 
論文情報:
Koji Murata, Kohei Ichikawa, Yuri I Fujii, Hisashi Hayakawa, Yongchao Cheng, Yukiko Kawamoto, Hidetoshi Sano,
“Cometary records revise Eastern Mediterranean chronology around 1240 CE”,
Publications of the Astronomical Society of Japan, psaa114
DOI: 10.1093/pasj/psaa114
https://academic.oup.com/pasj/advance-article-abstract/doi/10.1093/pasj/psaa114/6097039
 
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