東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

学際研究共創プログラム 研究概要(2020年度採択)

学際科学フロンティア研究所

田村 光平 助教

採択課題名
「学際性」の社会的インパクトに関する計量誌学的アプローチ
実施年度 2020-2021

大学の重要な社会的役割のひとつは、社会と知識の多様性を増し、それによって社会の持続可能性を上げることである。この文脈のうえでは、基礎研究は社会に存在する知識の多様性の増加に貢献する。中でも特に、学際的な研究は、これまでになかった視野を社会にもたらし、可能性を広げることに資するはずである。

学際研究が可能性を広げるという視点は、研究者にとっては一種当然のように受け入れられている一方で、そのためのデータは限定されている。加えて、研究者コミュニティの中では、学際研究の有益性は(論文誌への受理されづらさや査読者への対応の難しさといったコストともに)「当たった」場合に高ランクの論文誌への掲載や引用数の増加といった、個人の短期的なアウトプットへの評価として言及されることが多く、社会への⻑期的な波及効果(社会的インパクト)として語られることは少ない。また、ここで言われる「可能性」が具体的には何なのかは不明瞭である。このことは、研究者側が社会に対しておこなう大学や研究の機能についての説明が、空回りする一因となっている。

本研究では、学際研究が、研究者コミュニティと社会にもたらす「可能性」について、量的・質的なデータの両面から検討することを目的とする。より具体的には、学際科学フロンティア研究所所属の助教に、「学際的な論文」に関する「質問紙調査」をおこない、そこで挙げられた論文について、計量的な指標と、インタビューなどの質的な調査を組み合わせ、「学際的な論文」のインパクトや研究分野への波及効果について明らかにする。加えて、「学際性」に焦点を当て、大学および研究の社会的役割についての文献調査をおこなう。そうすることで、(1) 学際研究がもたらす「可能性」について具体化し、(2) それをもとに社会とコミュニケーションするためのプロトコルの確立をめざす。

成果のアウトプットの方法として、論文や書籍に加えて、ワークショップを開催するなどして、一般に開かれた議論の機会を創出する。ワークショップの目的には、「学際研究の社会的役割」をどのようなコミュニケーションの回路を使えば、効果的に社会に浸透させられるのかも検討の対象に含む。

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