東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

海外研究集会等発表支援 報告

大学 保一(新領域創成研究部 助教)

At the Intersention of DNA Replication and Genome Maintenance:from Mechanisms to Therapy
開催地/イタリア・トリエステ

期間/2016.6.27-7.1

この度、学際科学フロンティア研究所の発表支援プログラムに採択して頂き、イタリアのトリエステにおいて、International Centre for Genetic Engineering and Biotechnology(ICGEB)主催の"At the Intersection of DNA Replication and Genome Maintenance: from Mechanisms to Therapy"をテーマとした会議に参加し、最近の研究成果を発表し、関連分野の研究者と熱い議論を交わし情報交換を行うことができました。ICGEBは国連の機関であるUNIDOによって設立された組織であり、全世界的な分子生物学の発展を目指し、世界の様々な場所、トリエステ、ケープタウン(南アフリカ)、ニューデリー(インド)に研究所を持ちます。今回はその一か所であるトリエステにおいて、分子生物学の中でも特に歴史が長いDNA複製に関わる分野の会議が開かれました。約200名が参加する中規模なミィーテイングで、これは、多くの研究者と話し合いを設ける上で、最適なサイズであったと感じています。

この会議の参加者の多くは細胞内のDNA複製メカニズムの解明を目指す研究者であり、発表は、最近発見されたDNA複製因子の解析やそのメカニズムを試験管内で再構築したものが中心でした。その中で、特に目を引いたのは、新しい様々な技術・メソドロジーがDNA複製研究に応用され、それが分野の発展に目覚ましく貢献していることです。例えば、次世代シークエンサーを使用した全ゲノムを対象としたDNA複製過程の解析は多くの研究に取り入れられ、自分自身もその点に関する技術的な発展を発表致しました。その他にも、細胞内の複製因子の一分子の挙動を解析する研究や、X線構造解析、高度に化学反応を制御する機器を用いることによって、酵素反応のスナップショットを得る研究など、DNA複製メカニズムの諸過程をより具体的にイメージさせる発表が多くありました。これらの研究を目にして、自分の分野の殻に閉じこもらず、自らの研究のゴールに近づくために積極的に斬新なメソドロジーを開発、応用することの効果を再認識させられた次第です。

会議のタイトルに” from Mechanisms to Therapy”とある通り、DNA複製メカニズムの解明という基礎的な研究以外にも、我々ヒトの疾患の治療や予防を意識した研究の発表も多くありました。特に、DNA複製を人為的に「制御」することにより、がん細胞の増殖の抑制を検証する数題の研究は今後、自身の研究をがんの治療や予防に貢献する基礎医学的な研究へと発展させる上での研究指針を検討する上で非常に参考になるものでした。

このような機会を与えて頂いたことを、若手研究者海外研究集会等発表支援プログラムに感謝いたします。

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