東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

海外研究集会等発表支援 報告

鎌田 誠司(新領域創成研究部 助教)

High-Pressure Mineral Physics Seminar (HPMPS-9), Saint Malo, Flance
派遣先/フランス・サン・マロ

期間/2017.9.23-9.30

平成29年度若手研究者海外研究集会等発表支援プログラムの支援を受け、HPMPS-9にてポスター発表をフランスのサンマロにおいて行ないました。本プログラムに謝意を表します。

本研究は、高圧力実験において必須な圧力スケール作成を目的としている。先行研究では、衝撃波実験などで求められた状態方程式が存在する物質(Au、Pt、NaClなど)を用いて、さらに異なる物質(Fe、Fe3S、NaCl、KCl、MgOなど)の状態方程式を二次的に作成し、それらの物質を用いて実験圧力を決めている。しかしながら、このようにして決めた二次圧力スケールでは、基にした圧力スケールの違いに応じた差が現れてしまう。例えば、地球中心核において、実験圧力が10~20%異なり、これは地球核において深さでおおよそ1000kmほどの差になる。地球中心に存在する内核の大きさが1200km程度であるため、このような差は地球内部に適応する際に異なる結論へ導かれる恐れがある。そのため、他の圧力スケールに依存しない圧力スケールを決めることは重要である。本研究では、圧力スケールとしてよく用いられる白金の単結晶音速測定と体積(密度)測定を同時に行ない、弾性定数を決定した。弾性定数と体積から直接圧力を決定し、1次圧力スケールを作成した。本研究によって決められた圧力スケールを用いて地球内部を再現した実験を行なうことで、圧力決定精度が向上し、より精度の高い詳細な地球内部を議論できる。

私が参加したHPMPS-9は今回で9回目である。本会議の始まりはハワイにおける1976年日米高圧セミナーである(Liebermann, 2014, Physics of the Earth and Planetary Interiors)。故ブリッジマン博士によって開拓された高圧物質科学が地球科学へ応用され、地球表層の科学からより深部へと対象が移っていく中において、日本とアメリカが共同で地球科学における高圧セミナーが開催されることとなった。以後5年おきに1996年まで開催され、高圧地球科学が世界に広まっていく過程において、ヨーロッパの研究者も加わり、2002年からは現在の名称であるHPMPSとなり、イタリアで開催された。2007年には松島で開催され、私の指導教授がホストであった。そのため幸運にも私は学生ながらにして運営に携わることができ、また多くの研究者が参加する中でポスター発表をする機会を持った。初めての国際学会参加であり、名だたる研究者の発表を聞くことができ、とても思い出に残る学会であった。2012年に開催されたHPMPS-8では、イリノイ大学のポスドクとして参加し、口頭発表を行なった。このような思い出深い学会へ今回また参加する機会を持てた。本会議では、理論的もしくは実験的な手法を用いた極限環境下での惑星物質の物性や化学反応に基づく地球マントルと核の間における元素分配など物理的研究から化学的な研究に至る幅広い発表が行われた。本会議に出席し、他の研究者の最先端の発表を聞き、また私の研究発表について議論を行なうことができた。また、発表内容に限らず、海外の共同研究者と研究内容について議論を行なった。

今回初めての西側ヨーロッパであり、個人的にとても楽しみにしていた。しかしながら行きの飛行機は、機材トラブルによりキャンセルされ、翌日も予定時刻が大幅に遅れ、最終的には30時間を超える遅延となった。また、初日のキャンセル時に航空会社がホテルを手配しないことや遅延に対する十分な説明がないため、一部の乗客が地上係員に詰め寄るなど緊迫した状況であった。このような惨事に見舞われたが、学会自体は非常に有意義であった。今後も積極的に参加し、研究成果を発表していきたい。その際は航空会社の選定にも注意を払いたい。

  • 左:学会会場からのサンマロ旧市街風景。

  • 右:エクスカーション先のモンサンミシェル。

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