東北大学
学際科学フロンティア研究所

新領域創成研究部

鹿山 雅裕Masahiro Kayama

助教先端基礎科学

メンター教員
教授
中村 智樹(大学院理学研究科)
研究分野 惑星科学、隕石学、鉱物学、分光学
主な研究テーマ
  • 月面における水の起源と水源地
  • 月のマントルに含まれる水の推定
  • 隕石に記録された衝撃変成作用の解明
  • チクシュルーブ・クレーターに分布する衝撃鉱物の記載
所属学会 日本地球惑星科学連合、日本鉱物科学会、日本地質学会
研究概要  

月には水がありません。月は重力の小さい天体であるため、地球のように大気として水を留めることができないからです。しかしそれは大気に限ったことで、月の岩石については我々が予想する以上に水に豊富であることが最新の研究から分かりました。月探査機エルクロス(NASA)やチャンドラヤーン1号(ISRO)に搭載された反射光観測機器によって、月の南極に位置するエイトケン盆地や赤道付近の神酒の海の表面に分布する岩石から様々な種類の水(氷、鉱物と結合する分子水と構造水)が発見されました。では一体、この水はどこから来たのか、その答えは月の内部にあります。

これまでの通説では、月面に水をもたらす原因として、太陽から飛んできた水素(太陽風)と、大量の水を含む小惑星・彗星の衝突が有力であると考えられていました。しかし、この二つの説では「なぜ分子水や構造水が大量に存在するのか?」や「水はなぜ不均一に分布するのか?」を上手く説明することができません。最近になり、アポロ計画で回収された岩石試料の再分析が行われ、その結果、月のマントル(深さ約30から1300 km)に大量の水が存在することが予想されました。探査機による反射光観測からも、月面に分布する深部起源の岩石(ハンレイ岩)に水が豊富に含まれている可能性が指摘されています。しかし、これらの事実だけではまだ月の内部に大量の水が存在すると断定することはできません。それは、月内部の岩石に水がどれほど含まれているかを誰も直接測ったことが無いからです。残念なことに、この目的に適する試料はアポロ計画では見つかっていません。しかし幸運なことに、月の隕石に関してはハンレイ岩が見つかっています(左下図)。ただし、隕石は月面から脱出する際の衝突や地球に突入するときの摩擦熱、さらには長い間雨風にさらされていたことから分析は容易ではありません。

私がこれまでに専門として用いてきた分光装置(赤外吸収、ラマンおよびルミネッセンス)を改良し、加熱ステージを組み込むことで、月隕石に含まれる水の種類を決定、さらに含水量の推定が可能となりました。ハンレイ岩にはなんと、これまでの予想(最大で0.007 wt.%)を遥かに超える大量の水(0.1 wt.%)が検出されました(右下図)。これは、地球のマントルに存在する水の量に匹敵します。水があるかどうかは、人間が月に住む上で最も重要な問題です。飲用水から呼吸用酸素、ロケットの液体水素燃料など水は月での生活に欠かせない資源となります。また、月面もそうですが、月の内部にもどうやら我々が予想した以上に大量の水が眠っているようです。そう考えると、現在のジャイアント・インパクトモデルが十分に説明できません。これからは、このような月面開発や有人探査、さらには月の形成史を“月の水”の観点から明らかにすることを目指していきたいと考えています。

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