科学技術人材育成コンソーシアム連携シンポジウム

学の生態系:生存戦略としての再構築

Rewiring the Academic Ecosystem as a Struggle for Existence

2017年1月23日(月) 13:00-17:30
会場:東北大学 片平キャンパス さくらホール
入場無料・事前登録不要

企画趣旨

学術と社会がわかちがたく結びついている現在、一方で起こった変化から、他方も逃げることができない。社会の要請と、学術の理想を実現すること。その両方から、学術をとりまくさまざまな要素の結びつき――学の生態系《エコシステム》――は再編をせまられている。URAの登場、産学連携の推進、オープンサイエンスの登場など、その例は枚挙にいとまがない。

本会では、新しい学のかたちを、理想としてかかげるだけでなく、実践している方々をお招きし、その取組について紹介して頂く。第一部では、3つの「人材育成コンソーシアム」の取り組みに焦点をあてる。いくら社会情勢が変わろうとも、学術の中核は研究でありそれを生み出す研究者である。現代にどのような研究者を生み出そうとしており、そしてその理想がどのように実装されているのか、その取り組みを紹介して頂く。第二部では、こうしたコンソーシアムとしての取り組みの他に、先端的・実験的な取り組みを実践している講演者に、その理想と事例を紹介して頂く。先鋭化こそが学術の正義だが、現在必要とされているのは、先鋭化した思想をいかに社会に実装するかの方法論の確立だろう。第二部では、個別事例の紹介から、理論化をめざしたい。

日本の学術が衰退しつつあることは周知の事実であろう。生存戦略として変化することが不可欠である。しかし媚びるのではなく理想を実現する手段として、再構築の道をさぐりたい。

タイムテーブル

13:00-13:10開会挨拶 高梨弘毅(東北大学 金属材料研究所長)

 

第一部

進行:熊坂真由子(名古屋大学 URA)
13:10-13:35和田雅子(北海道大学 特任教授)
13:35-14:00寺田弥生(東北大学 特任准教授)
14:00-14:25小川正(京都大学 特任教授)・小野英理(京都大学 URA)
14:25-14:35休憩
  

第二部

進行:才田淳治(東北大学 教授)
14:35-15:20西野嘉章(東京大学 総合研究博物館長)【基調講演1】
15:20-16:05海部陽介(国立科学博物館 人類史研究グループ長)【基調講演2】
16:05-16:20展示紹介
 土岐文乃(東北大学 大学院工学研究科 助教)
 田中幹人(東北大学 学際科学フロンティア研究所 助教)
 津村耕司(東北大学 学際科学フロンティア研究所 助教)
16:20-16:40休憩
16:40-17:10パネルディスカッション
17:10-17:20閉会挨拶 佐藤正明(東北大学 学際科学フロンティア研究所長)
  
17:30-19:00情報交換会(会費1000円)
詳細はお問い合わせ下さい。

講演者紹介

基調講演


西野嘉章

海部陽介

東京大学総合研究博物館 教授
国立科学博物館 人類研究部 人類史研究グループ グループ長

第一部講演


和田雅子

寺田弥生

小川正

北海道大学人材育成本部・特任教授(コーディネーター)

連携型博士研究人材総合育成システム

【北海道大学・東北大学・名古屋大学】


東北大学金属材料研究所・特任准教授(コーディネーター)

計算物質科学人材育成コンソーシアム

【東北大学・東京大学・自然科学研究機構分子科学研究所・大阪大学】


京都大学次世代研究創成ユニット・特任教授(プログラムマネージャー)

京阪神次世代グローバル研究リーダー育成コンソーシアム

【京都大学・大阪大学・神戸大学】


小野英理

京都大学次世代研究創成ユニット・リサーチアドミニストレーター(URA)

京阪神次世代グローバル研究リーダー育成コンソーシアム



展示


土岐文乃

田中幹人

津村耕司

東北大学 大学院工学研究科 助教
東北大学学際科学フロンティア研究所 助教
東北大学学際科学フロンティア研究所 助教

有松唯

東北大学学際科学フロンティア研究所 助教


展示紹介

[A] 3万年前の航海徹底再現プロジェクト

[B] 先史のかたち展

[C] 「もしも君が杜の都で天文学者になったら。。。(もし天)」・「君が宇宙と社会のコミュニケーションをデザインするセメスター(きみせめ)」

日本列島にはじめて到達した人類は、3万年以上前に海を渡ってやってきた。現代のような科学技術はない中、200 kmを超える距離を、風と星を手がかりにして進路を決め進んでいく。彼らはどのようにして、この困難を突破したのだろうか。いや、そもそも、この旅は本当に可能だったのか?この謎に、実際に舟をつくり、航海することで挑むのが、国立科学博物館の海部陽介氏に率いられたチームである。人類学者、考古学者のみならず、海洋学や古気候学を専門にする研究者、さらには探検家までも含んだ多士済済な面々が、総力を結集して実験航海に臨む。本会場では、このプロジェクトの紹介動画をスクリーンで上映している。この海の碧さを、舟を揺らす波の音を、波をかく櫂の重さを、我々の祖先もたしかに目にし、耳にし、感じたのだ。変わらぬ自然に変わらぬ方法で挑むからこそ、過去そうであったことを我々もまた実際に体験できる。その感動に思いをはせるきっかけになれば幸いである。


発掘によって土の中から現れた考古資料は、考古学という学問の枠組みにそって認識され、整理され、解釈される。しかし、こうした枠組みが、現代を生きる我々によってつくられたものである以上、先史時代を生きた人々の在り方のうち、こぼれ落ちるものがあるのもまた必然である。現在の学術の方法ではとりこぼしてしまうものをすくうため、土岐文乃氏と建築学者・考古学者のチームは、先史時代の遺物の「かたちのダイナミクス」をそのまま表現するための空間を制作した。そこでは、東北大学考古学研究室所蔵の135個の土器が、かたちの類似性だけをもとに連鎖している。これは、理解しえないものを理解しようとする試みのひとつでもあり、同時に大学に所蔵されている資料の新しい価値を見つける試みでもある。本会場では、「先史のかたち」展の空間を切り取り、什器や制作資料などを展示している。


大学での教育とは、未知に挑む訓練をすることである。答えがないどころか、どう問いをたてるべきか誰も知らないところから、新たな価値をみつけ世に知らしめる。当然ながら、与えられるだけの教育からは、それを可能にする力は育まれない。田中幹人氏・津村耕司氏が提示するのは、学生が未知に挑む場である。「もし天」では、高校生が、研究計画の作成、観測、データ解析、結果のプレゼンテーションという、天文学の研究活動を一通り体験する。「きみせめ」は科学コミュニケーションを目的としており、学部生が授業の一環として、天文学と社会との軋轢を解消しようと試みる。思い通りにいくことはひとつもない。それでも、学生たちは、ときに夢と憧れを燃料に、ときに先達に背中を押され、初めての未知に立ち向かう。会場では、この活動の観察対象である天体の写真や、実際に議論のメモとして使用した「どこでもホワイトボード」、活動の動画などを展示している。混沌と乱雑こそが、未知に挑んだ者の苦闘の証しである。


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