学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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図 銀電極表面からのSERSスペクトル、-0.1V(OCP)(上)、-1.5V(下)―116―才田淳治、W.H. Ryu、山田類、伊佐野はる香、吉川智博 (先端学際基幹研究部/先端基礎科学領域) 伊藤 隆(先端学際基幹研究部/物質材料・エネルギー) 金属ガラスの緩和状態制御による脆性改善を目的とした熱的構造若返り法に着目し、その有用性を検討している。最近、単一試料内に冷却速度勾配を与えることで、構造若返りを2次元で傾斜的に導入する手法が脆性改善のために非常に有効であることを見いだした。[1] Zr60Cu30Al10 (at.%)金属ガラスロッド試料を軸に平行な向きに挟む上下2つのピースからなるCu治具を90μm程度の隙間が生じるように設計し、熱的構造若返り処理を行ったところ、冷却速度の遅い試料上部と速い試料下部でガラス状態が異なっていることが示された。2次元傾斜構造若返り試料は均一状態試料に比べ圧縮塑性伸びが2.9倍となり、加工硬化現象も確認された。破断面・側面観察からは、緩和状態の異なる領域でせん断帯の角度が変化する屈折現象が起きていた。このことから、せん断帯移動での応力集中・解放が起こり、その進展を阻害することで塑性伸びの改善と加工硬化が達成されたものと考察した。 参考文献 [1] W.H. Ryu et al., NPG Asia Mater., 12(2020)52. 亜鉛負極電池の高性能化を達成するためには、亜鉛負極における電極反応の詳細を描くことが必須の課題である。本研究グループでは、表面増強ラマン散乱分光法(SERS)を用いた電極界面における添加剤分子の動的挙動を追跡している。表面増強効果を期待できる銀電極を用い、電極界面におけるデンドライト抑制添加剤の役割を解明し、新規添加剤の探索に繋げようとする試みを行った。アルカリ電解液にアミン系添加剤を少量添加し、銀電極表面からのSERSスペクトルの測定を行った。図に開路電位(-0.1V)と亜鉛析出電位である-1.5Vにおけるその場ラマンスペクトルを示す。電位の変化に伴い、ラマンスペクトルに変化が見られている。この変化は、電極に吸着した添加剤の動的挙動に起因しており、亜鉛のデンドライト形成と大きく関係していることが判明した。今後、スペクトル解析を行い、詳細な電極界面のダイナミクスを描く。2次元傾斜構造若返り制御による金属ガラスの機械的特性の改善 高容量亜鉛極の研究開発-デンドライト抑制添加剤の探索-

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