学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―118―2021年度は,2020年度に達成したフラーレン内部への段階的原子分子挿入法により得られた新規分子に対し,放射光X線構造解析による低温下での精密構造解析を実施した.前年度までの結果では,理論的に予測される構造と実験による構造同定結果の不一致が問題となっていたが,フラーレン内部での化学種の熱運動を抑制した条件において,理論と実験の間でよい構造相関を得ることができた.また,内包化学種を構成する原子同士の相関に関し,NMRスペクトルおよび緩和時間測定により,特異な温度依存性が存在することを明らかにした.一方,内包化学種の振動分光においては,理論的に観測可能と予測される振動モードが実測できず,この原因については今後も継続して検討を進めていく. 8.2 新領域創成研究部 磁性金属ナノ粒子がセラミクス中に分散する「ナノグラニュラー膜」は、粒子間の電子のトンネリングが外部磁界で操作可能なことから、省電力な磁界センサなどへの応用が期待されています。従来の粒子の形状は球形でランダムに分散するため、等方的な磁気-抵抗・誘電特性を示しますが、特性を方向制御できない、磁界に対する感度が低いという問題がありました。今年度は、スパッタによる成膜条件の最適化により粒子の形状を球形から扁平・扁⾧に変化させること、および、扁平粒子においては面内に配列させることに成功しました。その結果、膜の横方向では磁気抵抗・縦方向では誘電効果を発現することに成功し、かつ、扁平粒子の膜では、磁界感度が向上する結果が得られました。本成果により、2022年 JointMMM-Intermag Conference にて Best Poster Awardを受賞し、2件の論文が受理されました。参考文献 [1]H. Kijima-Aoki, S. Ohnuma, N. Kobayashi, and H. Masumoto, “DC and AC tunnelingmagnetoelectric responses of lateral-cobalt nanogranular films” Journal of Magnetism and MagneticMaterials(2021)[2]H. Kijima-Aoki, Y. Endo, T. Miyazaki, T. Nojima, K. Ikeda, N. Kobayashi, S. Ohnuma, H. Masumoto,“Shape effect of Co nanoparticles on the electric and magnetic properties of Co-SiO2 nanogranular films”AIP Advances 12, 035229 (2022)本研究では,有機合成,およびプラズマを用いたフラーレン内部への段階的原子・分子挿入により,超不活性空間として知られるフラーレン内部における未踏不安定化学種のその場構築による超不安定化学種単離法の確立,および超不安定化学種の物性を活用した新しい材料科学を開拓することを目指している. 8.2 新領域創成研究部青木英恵(新領域創成研究部/物質材料・エネルギー領域) 上野 裕(新領域創成研究部/物質材料・エネルギー領域) 磁性-誘電ナノグラニュラー膜の構造制御と新規磁気機能性の開拓 超不安定化学種の新科学

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