学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―120―革新的ハイブリッドスラスタによる深宇宙探査の実現に向けて、2021年度は主に以下3項目を進めた。まず、固体燃焼の数値シミュレーションを実施し、固体・気体反応を伴う基礎燃焼機構を進めた(論文投稿準備中)。次に、構造質量の限界を極めるスラスタの制御性を高めるために、スパース(空間的に疎な)センサ位置最適化手法の開発を行った[1,2]。最後に、株式会社ElevationSpaceとの共同研究契約を締結し、当該スラスタの宇宙実証に向けて、実証機の研究開発に着手した。 参考文献 [1]Y. Saito et al., Determinant-Based Fast Greedy Sensor Selection Algorithm, IEEE Access, 2021.[2]Y. Saito et al., Data-Driven Determinant-Based Greedy Under/Oversampling Vector SensorPlacement, Computer Modeling in Engineering & Sciences, 2021.光エネルギーを利用した「発電」と,得られたエネルギーを蓄える「蓄電」を融合した,革新的光蓄電デバイスの開発に向けた基礎研究に取り組んでいる. 令和3年度は,リチウムイオン電池の正極としても利用されるスピネル型酸化物に着目し,その光充電の実証を目的とした研究を行った.具体的には,スピネル型構造を有するLiMn2O4と光触媒であるTiO2の混合電極に対して,電子アクセプターを溶解させた電解液中において白色光(紫外線を含む)を照射することで光充電を試みた.光触媒への光照射により生じたホールが正極材料の充電(酸化)反応を駆動し,一方で励起された電子は電子アクセプターとの反応で消費されることを想定した,負極材料を用いないハーフセルの設計である. 光照射した際の電極の電位変化をモニターすると,光照射の直後に電位が顕著に上昇し,蓄電池の充電曲線に類似した挙動を得た.これは,光照射によるLiMn2O4からのLi脱離反応を示唆する結果である.続いて電気化学的な放電試験を行うと,光照射の時間に応じた放電容量が得られ,さらに組成分析やX線構造解析においても充放電反応の進行が確認された.以上から,LiMn2O4正極の光駆動による充電反応の実証に成功した.今後は,光充電の高効率化に向けた各種材料の構造設計およびフルセル構築に向けた研究を推進する. 齋藤勇士(新領域創成研究部/物質材料・エネルギー) 下川 航平(新領域創成研究部/物質材料・エネルギー領域) 革新的ハイブリッドスラスタによる深宇宙探査の実現 革新的光蓄電デバイスの開発に向けた電池材料設計

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