学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―127―本研究の目標は、鳥類の移動パターンを形成する外的・内的要因、そして移動パターンの進化プロセスを明らかにすることである。小型記録計を鳥類に装着して移動経路を遠隔記録し、種ごとあるいは個体群ごとの移動パターンを形成する要因の分析を進めている。また、学内外の研究者と共同して、進化発生学・比較ゲノム学・形態学の手法を用いて移動パターンと相関する形質(翼形態、脳形態など)の進化メカニズムを探索している。本年度は、鳥類2244種の脳サイズを比較し、エネルギーコストの低い飛び方をするグループは相対的に大きな脳を持つ傾向があることを明らかにした(Shiomi 2022)。 参考文献 [1]K. Shiomi. Possible link between brain size and flight mode in birds: Does soaring ease the energeticlimitation of the brain? Evolution (2022) doi: 10.1111/evo.14425細胞内には,正確性・反応の効率が異なるDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)が多く存在し,真核生物の場合,10種類以上DNAポリメラーゼをもち,染色体DNA上に存在する様々な問題に対処するため,それらが分業し,効率的なゲノムDNAの複製を行っている.DNA複製と同方向に進むリーディング鎖合成をPolε,反対方向へのラギング鎖合成をPolδが主に担うことが現在までの出芽酵母や分裂酵母をモデルとした研究において示された.しかし,酵母よりも数百倍大きいゲノムDNAを持つ哺乳類においては,DNAポリメラーゼが同様に機能するかは明らかではなく,数多くのDNAポリメラーゼが協調的に機能して,よりフレキシブルな仕組みを通してDNA複製が行われると予想される.現在までに我々は,大腸がん由来の細胞hct116を使用して,ゲノムを網羅して個々のDNAポリメラーゼが機能する領域を同定する実験の確立を試みた.その結果,全ゲノムに渡りPolε,Polαそれぞれがリーディング鎖・ラギング鎖合成を行うポリメラーゼとして機能をすることを示される一方,複製開始反応や複製フォークの反応がRNAの転写から強く影響を受けることが示された.また,効率的な複製開始反応が500kb程度の間隔で起きつつも,ヘテロクロマチン化した領域においては,複製フォークが数Mbに渡り進行すると予想される領域も数多く観察された.これらの結果は,ヒト細胞のDNA複製は,酵母などの小さなゲノムを持つ生物とは異なる特徴を持つこと示す.参考文献 [1]E. Koyanagi, Y. Kakimoto, F. Yoshifuji, T. Natsume, A. Higashitani, T. Ogi, A.M. Carr, M.T.Kanemaki, Y. Daigaku, Global landscape of replicative DNA polymerase usage in the human genome,BioRxiv, https://doi.org/10.1101/2021.11.14.468503, 2022塩見こずえ(新領域創成研究部/生命・環境研究領域) 大学保一(先端学際基幹研究部/生命・環境) DNAポリメラーゼ機能のゲノムプロファイルから見る染色体複製 鳥類の移動パターンとその進化

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