学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―130―動物はきわめて多様な運動戦略を自律的に生み出すことで、無限定な環境変化に対して適応的かつタフに動き続けることができる。このような優れた運動知能は、神経系・身体・環境の三者の相互作用により生み出されると考えられている。本研究では、この動物の適応的運動知能に内在する制御構造の本質解明を通して、未知環境においても自律的かつ状況依存的に多様な振る舞いを生成可能な移動ロボットの実現を目指す。令和3年度は、ムカデの不整地歩行を対象として、柔軟な身体のダイナミクスと自律分散的な脚運動制御の連関様式を行動実験・数理モデリング・シミュレーション実験から明らかにした[1]。本研究成果は、複雑な地形においても、リアルタイムかつ少ない計算コストで効果的に推進できる多脚歩行ロボットの実現に資すると期待される。参考文献 [1]Yasui K, Takano S, Kano T and Ishiguro A (2022) Adaptive Centipede Walking via SynergeticCoupling Between Decentralized Control and Flexible Body Dynamics. Front. Robot. AI 9:797566.皮膚は生体と外界を隔てる大きな組織で有り、生体内活動を外界から守るため、様々な機能を有する。また、皮膚は生体環境を強く反映する場として知られており、皮膚内センシングや皮膚を介した薬剤送達(経皮薬物送達)の場として大きな期待は寄せられている。皮膚組織の最外層は角質層によって外界から守られているため、材料・デバイスを皮膚内にアプローチすることは容易ではない。本年度は、皮膚内に電気化学デバイスの接続を可能にするマイクロニードル(MN)型デバイス[1]を開発した。MNは⾧さ300~1000 µm程度の複数の針から構成されており、角質層突破に十分な強度を有している必要がある。また、ニードルを多孔質材料で構成することで、MNを介した電気的な接続を可能とする。我々は樹脂や生分解性高分子でできた多孔質MNを作製し、皮内へ施入できることを確認した[2]。また、多孔質MNを介したワクチンモデルの薬剤送達を可能とした[3]。参考文献[1]S. Kusama et al., Nat. Commun. 12 (1), 1-11, [2] H. Abe et al., Macromol. Mater. and Eng. 306 (9),2100171, 2021 [3] H. Abe et al., Adv. NanoBiomed Res., 2100066 2021安井浩太郎(新領域創成研究部/情報・システム領域) 阿部博弥(新領域創成研究部/デバイス・テクノロジー基盤) 生物の適応的運動知能を実現する新たなロボット設計論 「コトミメティクス」創成: 皮膚の内側に電気を流すデバイス

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