学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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本研究では,特に尿道の運動や周囲臓器の影響などが尿の輸送に与える流体力学的影響と,下部尿路症状と呼ばれる疾患との物理的因果関係の解明を目的としている.これまでの研究で,超音波のハイフレームレート撮影技術を基盤として,高速かつ定量的な流れの計測・可視化技術を開発してきた.令和3年度は,生体に適用可能な下部尿路排尿流動態イメージングを実現する研究用超音波装置及び専用の経直腸リニアプローブを開発し,本装置を用いて,生体内の排尿流動態の詳細な時空間的変動の観察を目指した.獨協医科大学病院排泄機能センタ―と共同で,前立腺肥大症患者及び下部尿路症状を有する症例約30例を対象とした臨床研究を実施し,被検者の排尿の開始期・中期・終末期における尿路臓器および流れの時空間変動を1秒間あたり5,000枚のハイフレームレート撮影で記録した.得られたエコーデータを用いて流れベクトル場の時空間変動を推定することで,生理的排尿中の詳細な排尿流動態を初めて可視化する事に成功した.今後得られた臓器および流れのデータを定量的に解析し,尿道形態運動と排尿流との物理的相互作用を明らかにしていく. ―131―集積回路の活用範囲は年々拡大の一途を辿っており、温度に依存しない安定な動作が求められている。集積回路を構成する要素の中で抵抗値が高い要素として、トランジスタと抵抗器が挙げられる。本研究では集積回路の熱安定性向上を目的として、集積回路で用いられるマイクロ・ナノスケールの抵抗器の温度依存性の低減を図った。電気抵抗の温度依存性が極端に低い材料系として、窒化マンガン化合物が注目されている。そこで、本研究では集積回路への応用が可能なマイクロ・ナノスケールの窒化マンガン抵抗器を試作した。試作した窒化マンガン抵抗器はバルク材には及ばないものの、非常に低い温度依存性を示した。今後は窒化マンガン抵抗器を有する集積回路を試作し、検証を行う。 参考文献 [1]H. Kino et al., “High-thermal-stability resistor formed from manganese nitride compound thatexhibits the saturation state of the mean free path,” Applied Physics Express, 14 091003, 2021.https://doi.org/10.35848/1882-0786/ac18b0石井琢郎(新領域創成研究部/デバイス・テクノロジー) 木野久志(先端学際基幹研究部/デバイス・テクノロジー) 下部尿路排尿流動態の超音波ハイフレームレートイメージング 低い温度依存性を有する窒化マンガン化合物抵抗器の開発 集積回路の熱安定性向上に向けた

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