学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―140―市川幸平(新領域創成研究部/先端基礎科学)(游明朝体Regular 11pt 中央寄せ) 本年度は若手リーダー海外派遣プロジェクトによってドイツのマックス・プランク研究所 (MPE) に⾧期滞在を行い、MPEが主導するeROSITA X線衛星で取得した活動銀河核カタログの多波⾧解析に寄与をした。その成果はA&A誌にacceptされ、近々eROSITA特集号として掲載予定である。また、その情報を利用し、具体的にはVLA/FIRST電波カタログやSubaru/HSCの可視光情報をマッチングすることで、我々が発見した非常に若く、かつ激しく成⾧しているブラックホールの性質を調査した。その成果を第一著者としてA&A誌に投稿予定である。 また、我々が研究を続けている「死につつある活動銀河核」の研究成果をpress releaseしただけでなく、同時にアメリカ最大の天文学会American Astronomical Society MeetingでPress Conferenceを行った。この発表はYoutubeでも2900回以上再生されるなど人気を博し、英語・日本語・スペイン語などの言語であらゆる媒体で成果が取り上げられた。 生体内では幾つもの化学反応が連鎖的に繋がっており、さまざまな生命現象が発露されている。生命活動に必要な複雑な化合物群も複数の酵素反応による多段階の物質変換を経て、合成されている。この多段階の酵素反応ネットワークを再設計して物質生産や医薬への応用をめざす合成生物学的研究が注目を集めている。これらの研究に対して、有機合成化学的に開発されてきた非天然の化学反応を自在に統合することが可能となれば、酵素反応だけではアクセスできない高付加価値化合物の生産や新たな作用機序の医薬の開発に繋がる。我々は生体内あるいは細胞内といった夾雑環境に非天然の化学反応を導入するための方法論として、我々は人工金属酵素に注目している。[1] 人工金属酵素は非天然の合成金属錯体をタンパク質の内部空間に導入することで構築される。本年度は、これまでに報告者が見出した合成錯体触媒を内包可能だと考えられる複数のタンパク質およびそれらの変異体の発現系を確立した。それらの候補タンパク質の中から、合成錯体触媒と結合可能なものをいくつか見出すことに成功した。また、Rational Designによって、元来、金属イオンとは結合しないタンパク質に金属イオンの結合サイトを構築することに成功した。参考文献 [1]Y. Okamoto, R. Kojima Methods Mol. Biol. 2021, 2313, 287-300.岡本 泰典(新領域創成研究部/先端基礎科学) Systems Catalysisに向けた新規人工金属酵素の開発 多波⾧電磁波観測からさぐる活動銀河核研究

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