学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―141―小胞体内では生合成されたタンパク質に天然型ジスルフィド結合の導入を極めて迅速に進行するための触媒反応を備えており、素早く天然構造を構築するシステムが存在する。これらジスルフィド結合の触媒に関し、⾧年Protein Disulfide Isomerase (PDI)酵素により行われると考えられてきたが、近年、哺乳動物細胞の小胞体には20種類以上ものPDIファミリータンパク質が存在し、世界に先駆けて小胞体内で働くジスルフィド結合の触媒ネットワークの同定と分子基盤の解明を進めてきており、従来考えられてきたよりはるかに複雑な小胞体内ジスルフィド結合触媒ネットワークを示した。これらPDIファミリーは幅広い基質に働きかけるが、基質認識機序は不明であった。そこで、高速AFMを用いてPDIファミリーが基質に働きかける様子を1分子で可視化することに成功した[1-2]。さらにPDIファミリーのひとつP5の新規構造を決定した[3]。このP5は他のPDIファミリーと複合体を組むことで触媒活性を亢進することを明らかにした[4]。またPDIファミリーのひとつERp57はパートナーシャペロンとの複合体形成及び機能をカルシウムによって調整されることを示した[5]。以上、小胞体内で働く幾つかの幾種かのPDIファミリー酵素における基質の分子認識における各論的そして普遍的知見を得た。参考文献 [1]M. Okumura, …and K. Inaba “Dynamic assembly of protein disulfide isomerase in oxidative proteinfolding” Nature Chemical Biology 15, 499-509 (2019).[2]M. Okumura, K. Noi, and K. Inaba.“Visualization of structural dynamics of protein disulfideisomerase enzymes in catalysis of oxidative folding and reductive unfolding” Current Opinion inStructural Biology 66 49-57 (2021).[3]M. Okumura, …and K. Inaba K. “A unique leucine-valine adhesive motif supports structure andfunction of protein disulfide isomerase P5 via dimerization” Structure. Dec 2;29(12):1357-1370.e6(2021)[4]M. Matsusaki, …and M. Okumura. “Functional Interplay between P5 and PDI/ERp72 to DriveProtein Folding” Biology Oct 28;10(11):1112 (2021)[5] Y. Tanikawa, …and M. Okumura. “Ca2+ Regulates ERp57-Calnexin Complex Formation” Molecules.May 11;26(10):2853 (2021)奥村正樹(新領域創成研究部/先端基礎科学) 小胞体内蛋白質品質管理における分子構造基盤

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