学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―142―ニュートリノは反応確率が小さく星内部で生成された時の情報を持ったまま地球に飛来するため他の光学的観測と比べて違った視点から宇宙を眺めることができる. 本研究ではKamLAND検出器において太陽フレア[1], 過去の超新星爆発や暗黒物質対消滅および太陽磁場転換ニュートリノ[2], 超新星爆発頻度[3], ガンマ線バースト[4], 高エネルギーニュートリノとの相関事象[5]についてニュートリノ探索を行い, 上限値を与えた.またニュートリノにはマヨラナ性(粒子・反粒子対称性)があるとされ, 世界中でニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索を通しての検証がなされている. 今回KamLAND-Zen800実験において背景事象を大幅に低減した環境を構築し[6], 世界で最も厳しい制限を与えた[7].参考文献 (著者は原則アルファベット順) [1]S.Abe et al. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ac35d1[2]S.Abe et al. https://doi.org/10.3847/1538-4357/ac32c1[3]M.Eizuka et al. https://doi.org/10.1088/1742-6596/2156/1/012195 (Proceedings of TAUP2021)[4]S.Abe et al. https://doi.org/10.48550/arXiv.2112.04918 (accepted for ApJ)[5]S.Abe et al. https://doi.org/10.48550/arXiv.2202.07345 (Preprint)[6]Y.Gando et al. https://doi.org/10.1088/1748-0221/16/08/p08023[7]S.Abe et al. https://arxiv.org/abs/2203.02139 (Preprint)ブラックホールは降着円盤と呼ばれるプラズマの乱流に取り囲まれている。降着円盤の中でプラズマは高温に熱せられ電磁波放射する。この放射を観測することで我々は間接的にブラックホールの情報を得ることができる。降着円盤におけるプラズマ乱流は、磁気回転不安定性 (MRI) によって駆動されているというのが通説である。MRI乱流のシミュレーションは1990年初頭以来、膨大な数が行われてきたが数値解像度が不十分であり、乱流の特性を捉えるに至っていない。そこで私は擬スペクトル法を用いたシミュレーションコードCALLIOPE (https://github.com/ykawazura/calliope) [1]を開発した。擬スペクトル法は無限次の精度を持っており数値粘性が存在しないため、非常に高解像度なシミュレーションが可能となる。このコードを用いて、史上最高解像度のMRI乱流シミュレーションの実行に成功した。その結果、乱流の特性が数値解像度に依存しなくなる慣性領域まであと僅かというところまで到達した。参考文献 [1]Y. Kawazura, “C ALLIOPE: Pseudospectral shearing magnetohydrodynamics code with a pencildecomposition,” The Astrophysical Journal 928, 113 (8pp) (2022).小原脩平(新領域研究部/先端基礎科学) 川面洋平(新領域創成研究部/先端基礎科学) 宇宙由来のニュートリノ探索とニュートリノのマヨラナ性検証 擬スペクトル法を用いた超高解像度な降着円盤乱流シミュレーションコードの開発

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