学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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林久美子(工学研究科)、鈴木直輝(医学系研究科)、井田大貴(学際科学フロンティア研究 ―148―8.4 領域創生研究プログラム(令和3年度終了課題) 最上譲二(工学研究科)、吉年規治(IMR)、鎌形清人(IMRAM)、周偉偉(工学研究科) 本研究では、金属粉末粒子の表面を有機材料でコーティングすることにより、金属粉末粒子の流動性を向上させ、より欠陥の少ない金属3D積層造形を実現することを目指した。軽量、高強度、高耐食性、高生体適合性の観点から、Ti6Al4V合金が、3Dプリント用合金として生体材料への応用を期待されている。3D積層造形法の代表的なものに、パウダーヘッド法があり、用いられる粉末には、高い流動性と高密度充填性が求められている[1]。そこで着目したのが、配列を自由にデザインでき、精密な重合が可能であるペプチドである。荷電性のアミノ酸を有し、かつ金属粉末表面と特異的に相互作用する配列を有するペプチドを作製する事を試みた。本研究の核となる金属粉末表面との特異的に結合する配列は、ファージディスプレイ法[2,3]を用いて決定した。結果として、いくつかの特異的に結合するペプチド配列を決定し、電気化学発光法を用いて、ペプチドとTi6Al4Vが結合することを確認できた。参考文献 [1]A. Santomaso et al., Chem. Eng. Sci. 58, 2857–2874 (2003).[2]G.P. Smith, Science, 228, 1315–1317 (1985).[3]J.K. Scott, G.P. Smith, Science, 249, 386–390 (1990).極値統計学は気象、防災、経済、オリンピック記録、ヒトの寿命など私たちの生活に関連する事柄に応用されてきた。本研究は同統計学をナノサイズのバイオロジーに応用する学際研究である。『数学』×『生物』の学際研究で実験データ解析の新手法の開発を目指す。 神経細胞は細胞体とシナプスがある末端が⾧い軸索によって連結されているが、細胞体で合成された物質はタンパク質分子モーター(キネシンとダイニン)によって末端まで輸送される。キネシンとダイニンはナノサイズのランナーである。極値統計学の利用でキネシンとダイニンの細胞内最高速度の見積もりに成功した [1]。極値統計学の再現プロットの性質からキネシンとダイニンの動作メカニズムの相違も発見された [1]。今後、鈴木の提供するヒトiPS由来のニューロンで井田の顕微鏡技術を用いて軸索輸送の⾧時間追跡を目指し、より正確な極値統計解析でヒト神経疾患を調べたい。 参考文献 [1] T. Naoi, et al., bioRxiv, DOI:10.1101/2021.12.29.474400 8.4 領域創成研究プログラム(令和3年度終了課題)所) ファージディスプレイ法を用いた有機材料被覆金属粒子の創製Preparation of Metal Particles Coated with Organic Material Using 極値統計学を用いた神経細胞軸索輸送の最高速度の研究 Phage Display Method

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