学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―149―A549肺上皮細胞培養系により検証を行った。ハニカム構造は肺上皮細胞の増殖には特に影響を与えなかった。一方でハニカム構造に肺上皮細胞を培養すると、肺胞様の構造を取ることがわかった。また定量PCRにより遺伝子発現をみると、肺2型上皮細胞特異的蛋白質であるサーファクタントプロテインの亢進が認められた。 Honeycomb構造が肺胞微細構造を模しているという仮説に基づき肺細胞を培養したところ、仮説のとおり肺上皮細胞に適した微小環境である可能性が示唆された。引き続き多能性幹細胞由来細胞をHoneycombフィルムへ培養し、分化定着があるかどうかを確認する。横山武司(生命科学研究科)、池田真教(加齢医学研究所)、天貝佑太(多元物質科学研究近年、細胞内でタンパク質や核酸の流動的な多量体化によって、空間的に区分された液滴領域を形成し、生命機能に大きく関与することが明らかになりつつある。本研究課題では、この「生物学的相分離」に着目し、4人の研究者が分野横断的に集まることで、いまだ十分に研究手法が確立されていない生物学的相分離研究のプラットフォームの確立に取り組んだ。具体的には研究グループ内で、それぞれの専門領域、クライオ電子顕微鏡(横山)超高速AFM(奥村)超解像顕微鏡(天貝)生化学解析(池田)がお互いに連携することで幾つかの研究プロジェクトを推進し成果を報告した(以下参照)。クライオ電子顕微鏡については、令和3年度に東北大学に導入された最先端のクライオ専用の透過型電子顕微鏡の立ち上げを行い、生物学的相分離を可視化するための準備を行った。また、小胞体ストレス応答に関与するPDIファミリータンパク質の多量体化機構の解明における成果をあげた。参考文献 [1]M. Okumura …Y. Amagai et al., (2021). A unique leucine-valine adhesive motif supportsstructure and function of protein disulfide isomerase P5 via dimerization. Structure 29(12), 1357–1370.e6. 研究代表者 鈴木隆哉(東北大学加齢医学研究所)、梨本裕司(東北大学学際科学フロンティア研究所)、阿部博弥(東北大学学際科学フロンティア研究所)、藤野直也(東北大学病院)本研究の目的は、マイクロ流路(流体/構造)・多孔質材料(バイオマテリアル)・誘導性肺前駆細胞技術(細胞工学)を組み合わせ、微細かつ複雑な肺胞微小環境を再現し、スケーラブルな肺胞上皮細胞の培養環境を創出することである。梨本と鈴木はマイクロ流路を用いたヒトES細胞の分化誘導研究を以前より行っていた。また鈴木と阿部は多孔質基材(ハニカムフィルム)が細胞に及ぼす物理的影響の研究を共同で行っていた。これらの技術を統合することにより、肺組織微小環境をin vitroで再現する培養基盤が作成できる可能性に思い至った。 まず肺胞構造を模したハニカムフィルムが肺上皮細胞に与えるシグナルを検討し、同時にハニカム構造をインテグレートできる流路の検討を行った。所)、奥村正樹(学際科学フロンティア研究所) 最先端タンパク質構造解析を駆使した生物学的相分離の理解 マイクロ流路と多孔質材料を用いた肺胞局所構造の再現

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