学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和3年度
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―151―阿部博弥(学際科学フロンティア研究所)、郭 媛元(学際科学フロンティア研究所)、 脳内の化学シナプスでは神経伝達物質のやり取りが活発に行われており、学習や記憶、感情などの脳機能の基盤である。電気化学計測は神経活動、特に神経伝達物質の放出を高感度かつ高い時間解像度で計測するための有力な手段[1]である一方、多くの研究は生体から脳を取り出したex vivo計測に留まっており、活動中の生体に対するリアルタイムなin vivo計測には至っていない。これは電気化学計測プローブがガラスやシリコン製のため固く、生物の活動に追従できないためである。本研究では、モデル生物としてショウジョウバエを用い、脳内の神経伝達物質放出を電気化学的にモニタリングにする柔軟な高分子プローブを作製することを目的とした。本研究期間では、ショウジョウバエのin vivo計測までには至らなかったが、作製した導電性高分子プローブがドーパミンを高感度で測れることを確認し、マウス脳内における刺激に対するドーパミン放出挙動のモニタリングに成功した(論文投稿中)。 参考文献 [1]H Abe, T Iwama, Y Guo, “Light in Electrochemistry” Electrochem 2 (3), 472-489田村光平(学際科学フロンティア研究所)、當真賢二(学際科学フロンティア研究所) 本研究では、「学際」的な研究のあり方を、質的・量的な分析の両方から明らかにすることを目指している。今年度は、2020年におこなわれたシンポジウム「声を届ける回路」の書籍化を進めた。また、NISTEPが公開しているサイエンスマップのデータを用い、研究領域の関係性をネットワークとみなして解析した。キーワードの類似度をもとに、研究領域のネットワークを作成し、中心性などのネットワーク科学の指標を計算した。ネットワークのクラスタリングをおこなったところ、「学際的」な研究領域は、臨床医学や化学といった応用的な分野が多く含まれる、大型のクラスタにランダムから期待されるよりも属していやすいことが示唆された。クラスタによって「学際領域」とほかの領域との関連は多様であり、政策決定者や研究者によって、学際研究について異なる見方をしている可能性も示唆された。今後、質問紙調査などから、こうしたパターンを作り出すメカニズムについて調査することを検討している。市之瀬 敏晴(学際科学フロンティア研究所) 「学際性」の社会的インパクトに関する計量誌学的アプローチ in vivo神経活動記録のための導電性高分子プローブの開発

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