学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
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―117―Atomic Diffusion Bonding (ADB): Room Temperature Bonding of 原子拡散接合法を用いた室温接合技術 Wafers for Creating Various Devices 収束電子回折法による結晶界⾯の局所構造解析 原子拡散接合法は,ウエハや基材の接合面に薄膜をスパッタ法等で形成し,引き続き同一真空中で薄膜を相互に重ね合わせることで室温で接合する技術である.ウエハや基材の材料を選ばず,金属膜,酸化膜,窒化膜等を用いた接合が可能であり,この技術の高度化を目指している.本年度の主な成果として,まず,ZrO2,Al2O3等の酸化膜を用いた接合性能を向上させ,接合界面が完全に消失する接合技術レベルに達した[1].これにより,耐光性と電気的絶縁性に優れた接合界面の形成が可能となった.また,金属膜を用いた接合をSiCパワーデバイスの放熱に用いることで,接合界面の熱抵抗を従来比で90%以上低下させたこと[2]等が挙げられる.今後も,本接合技術の高度化とデバイス形成技術としての展開を図りたい. 参考文献 [1] T. Shimatsu, M. Uomoto, T. Saito, T. Moriwaki, and N. Kato, Proceedings of WaferBond’22 Conference on Wafer Bonding for Microsystems, 3D- and Wafer Level Integration, 19-22 (2022). [2] 平尾章,堀元人,池田良成,島津武仁, Proceedings of the 28th Symposium on Microjoining and Assembly Technology in Electronics (mate2022), vol.28, 149 (2022). ナノ電子プローブを用いる収束電子回折(Convergent-beam electron diffraction: CBED)法により、局所結晶構造解析を行う手法の開発と応用に取り組んでいる。本年度は、結晶界面の定量的な結晶構造解析を目的として、結晶界面を含む超格子構造にナノ電子プローブを照射してCBED図形の強度計算を行う手法の開発を行った。界面を含む超格子構造を用いることで、界面近傍の構造分布や界面におけるポテンシャルジャンプの影響を直接取り扱うことができる。この場合、元の単位胞の基本反射に加えて多数の超格子反射が現れるが、これらがコヒーレントに干渉する条件で強度計算を行うことになる。電子プローブの位置、サイズ、形状の情報は結晶上面の境界条件として扱う。これはコヒーレントCBED図形の計算 [M. Terauchi et al., Ultramicrosc. 54 (1994) 268] に相当する。この方法では、異なるプローブ位置および異なる試料厚さに対する計算は、ブロッホ波計算で境界条件のみの変更となり、計算コストが小さく済む利点がある。これは試料上の多数の点からCBED図形を得る4D-STEM 法の定量解析に有利である。一方で、大きな超格子構造により計算時間が増大するが、MPIによる並列計算を適用して大幅に計算時間を短縮した。このような手法をわれわれが開発している動力学回折計算コードMBFITに実装し、CaTiO3の極性双晶境界等に適用した。 島津武仁(先端学際基幹研究部/情報・システム領域) 津田 健治(学際研、先端学際基幹研究部)

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