学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
121/152

4金属材料研究所, 5大学院工学研究科)Zr55Al10Ni5Cu30 (at.%)金属ガラスロッドの緩和試料を真空雰囲気中で急速加熱・急速冷却させて熱的構造若返り処理を行ったところ、ガラス構造を維持したまま未緩和状態に遷移し、同時に延性の改善が確認された。この時のSTZの体積は、緩和状態から増大することがわかった。[2] STZの体積はPoisson比と密接に関係していて、その増大にともなって延性が改善することが知られており、[3] 今回の結果はそのことを支持するものである。STZ体積の増大は活性化されるSTZの数が少ないことを示していて、STZの協調運動によっておこる変形の集中がもたらす最終破断(主せん断帯)を抑制していることにつながっていると考察した。参考文献[1] J. Saida et al., Sci. Tech. Adv. Mater., 18(2017)152.[2] W. Guo et al., J. Phys. Condensed Matter, 35(2023)154004.[3] D. Pan et al., PNAS, 105(2008)14769.―118―才田淳治1、Wei Guo1,2、山田類3,4、阿部泰人5、伊佐野はる香5、吉川智博5熱的構造若返りによる⾼度に構造制御された⾦属ガラスの作製と機械的性質亜鉛負極電池における⾼容量亜鉛極の研究開発 伊藤 隆(先端学際基幹研究部/物質材料・エネルギー)  (1先端学際基幹研究部/先端基礎科学領域, 2華中科技大学, 3新領域創成研究部, 金属ガラスの緩和状態制御による脆性改善を目的とした熱的構造若返り法に着目し、その有用性を検討している。発表者は熱的構造若返りにより、緩和によって失われた延性が回復すること報告している。[1] 本発表では、延性改善の機構を粘性流動変形で観察されるせん断帯(Shear band)の前駆現象であるShear Transformation Zone (STZ)の観点から考察した。高容量亜鉛極の研究開発の枠組みの中で、亜鉛負極電池における亜鉛負極おける亜鉛デンドライト形成を抑制する電解液添加剤の研究開発を行っている。亜鉛負極電池のサイクル劣化を改善する方法の一つとして、亜鉛負極におけるデンドライト形成を抑制する必要がある。亜鉛電極におけるデンドライト形成の抑制は、電池の耐久性や出力特性の確保につながる。添加剤として有機アミン系化合物に焦点を当て研究開発を行っている。図に電流密度を変えた場合のデンドライト形成状況の電子顕微鏡写真である。上部は添加剤が無い場合、下部は添加剤が存在している場合である。明瞭に添加剤の効果が観測されている。今後、添加剤の幅を広げ、高容量亜鉛極に根差した添加剤を探索する。 参考文献 [1]伊藤 隆、髙橋貴美子、亜鉛負極電池、PCT/JP2023/7024, 2023-02-27.

元のページ  ../index.html#121

このブックを見る