学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
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これまでの量子化学・分子流体工学・材料科学を基盤とした研究を発展させ、従来とは全く異なった異分野融合的視点から細胞内人工イオン輸送制御システムを創出することを目指して、異分野融合研究を推進した。「人工DNAチャネルによるイオン選択性の制御」および「人工相分離構造体によるイオン濃度の制御」という、ナノスケール化学反応・物質輸送現象およびメゾスケール相分離現象という異なる時間・空間スケールの現象を融合させたマルチスケール操作によってイオン輸送を制御する。2023年1月に創発間共同研究として私が筆頭・責任著者で出版した関連論文[1]は、人工相分離材料の基盤となるものであり、今後同材料の発展が期待できる。人工DNAチャネルを用いたイオン輸送特性についても共同研究先の実験データと直接比較することで、計算の妥当性を検証するとともに、ポア径が輸送特性に与える影響について明らかにすることができた。 参考文献 [1] T. Mabuchi*, J. Kijima, Y. Yamashita, E. Miura, and T. Muraoka*, “Coacervate Formation of Elastin-like Polypeptides in Explicit Aqueous Solution Using Coarse-Grained Molecular Dynamics Simulations”, Macromolecules (2023), in press. ―122―Ishikawa, H. Tanaka, S. Gupta, S. Takaishi, M. Yamashita, ナノ空間反応性イオン輸送制御システムの創出 Exploring on sub-nano and single-ion magnetism 量子コンピュータやスピントロニクスといった先端技術を推し進めるには、量子の領域における極微な磁石の開発と磁気メカニズムの解明が必要である。本研究は、炭化鉄クラスターを用いたサブナノサイズの磁石合成と[1]、金属有機構造体をフレームワークとしたドーピング型単イオン磁石合成を行った[2]。様々な磁気測定から、炭化鉄クラスターは室温でも磁気ヒステリシスを持つ強磁性体であり、金属有機構造体にドーピングしたコバルト(II)イオンは量子的な遅い磁気緩和挙動を示す単イオン磁石であることを明らかにした。本成果は新しいタイプの微小磁石を実現し、量子磁性材料の発展に資すると期待される。 参考文献 [1] M. Wakizaka, W.-J. Chun, T. Imaoka, K. Yamamoto, RSC Adv. 2022年, 巻12, pp.3238–3242. [2] M. Wakizaka, R. https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-2517253/v1. 馬渕拓哉(新領域創成研究部/物質材料・エネルギー) 脇坂 聖憲(新領域創成研究部)

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