学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
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―124―ヒスチジン残基修飾法の開発と触媒近接標識への応用 進化移動学的アプローチによる鳥類の移動生態研究 一重項酸素によって酸化されるヒスチジン残基を、独自に開発した求核剤によって捕捉することで、ヒスチジン残基を標識する手法を開発した。一重項酸素は光触媒の可視光励起によって発生する高反応性の活性酸素種であり、その短寿命性から光触媒周辺10 nm程度の空間で選択的にタンパク質を標識可能である。ヒスチジン残基の標識に有用な光触媒を探索したところ、蛍光色素として汎用されるBODIPYが効果的な触媒として機能することを明らかにした1。また、BODIPYの近接環境でのヒスチジン残基標識法を活用して、抗体Fc領域の選択的修飾を達成した2。本反応が一重項酸素を介して進行するということに着目し、近赤外光を駆動力とする世界初のタンパク質修飾法を見出した(論文投稿中) 参考文献 [1] K. Nakane, H. Nagasawa, C. Fujimura, E. Koyanagi, S. Tomoshige, M. Ishikawa, S. Sato*, Int. J. Mol. Sci., 2022, 23, 11622. [2] K. Nakane., T. Niwa, M. Tsushima, S. Tomoshige, H. Taguchi, H. Nakamura, M. Ishikawa, S. Sato*, ChemCatChem, 2022, 14, e202200077. 本研究の目標は、鳥類の移動パターンを形成する外的・内的要因、そして移動パターンの 進化プロセスを包括的に明らかにすることである。動物搭載型の行動記録計を用いた自然環境下での行動計測と解析、移動に関わる形態的な特徴の獲得プロセスを明らかにするための発生実験、そして各種形質データの種間比較解析、などを組み合わせたアプローチで、学内外の研究者と共同して研究を進めている。 本年度は、これまでに明らかになった鳥類の飛行様式と脳形態の相関関係(参考文献1)に基づき、海鳥を対象とした野外調査を実施した。移動経路と脳形態を野生個体で効率よく計測する手法を確立し、データの取得に成功した。 参考文献 [1] K. Shiomi. Possible link between brain size and flight mode in birds: Does soaring ease the energetic limitation of the brain? Evolution (2022) doi: 10.1111/evo.14425 佐藤伸一(新領域創成研究部/生命・環境) 塩見こずえ(新領域創成研究部/生命・環境領域)

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