学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
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スピン起電力は、電子スピン間の相互作用に起因する、磁性体中の電気-磁気エネルギー変換現象である。本年度は、様々な異なるナノ磁気構造を対象とし、上述現象及び関連する効果に対する理論予言および実証研究を行なった。強磁性/重金属ヘテロ構造薄膜における量子相対論的インダクタンスの予言[1]、カイラル反強磁性体Mn3Snの単結晶薄膜における光磁気効果を利用した磁区観察[2]、さらに人工的な積層反強磁性薄膜での非対称スピン間交換相互作用を利用した新規磁化反転の実現[3]等に成功している。これらは、スピン物理の基礎理論研究を新規デバイス提案研究と結びつけ、新たな学際研究の開拓に挑戦するものである。 参考文献 [1] Y. Yamane, S. Fukami, and J. Ieda, Physical Review Letters 128, 147201 (2022). [2] T. Uchimuram … Y. Yamane et al., Applied Physics Letters 120, 172405 (2022). [3] H. Masuda, T. Seki, Y. Yamane et al., Physical Review Applied 17, 054036 (2022). 日本全国の埋蔵文化財センターや博物館をまわって計測してきた三次元データが、土器約700点、古人骨約1300点になった。こうしたデータの解析、データベース化、論文化がはじまった。データベースについては、クリエイティブ・コモンズライセンス下での公開に同意頂いた土器200点をもうすぐ公開できる見込みである。関連する業績として、三次元計測の手法についての論文がPLoS Oneに掲載された[1]。解析結果に関する論文が、『奈文研論叢』の特集号に2本[2,3]、『情報考古学』に1本掲載された[4]。 参考文献 [1] Kaneda, A., Nakagawa, T., Tamura, K., Noshita, K., & Nakao, H. (2022). A proposal of a new automated method for SfM/MVS 3D reconstruction through comparisons of 3D data by SfM/MVS and handheld laser scanners. PloS one, 17(7), e0270660. [2] 野下浩司, 金田明大, 田村光平, 中川朋美, 中尾央(2022)「遠賀川式土器の形態に関する数理的考察:田村遺跡、矢野遺跡、綾羅木郷遺跡を中心に」『奈文研論叢』3, 65-82. [3] 中川朋美, 金田明大, 田村光平, 中尾央(2022)「SfMとレーザー計測による古人骨計測結果の比較」『奈文研論叢』3, 39-64. [4] 野下浩司, 金田明大, 田村光平, 中川朋美, 中尾央(2022)「遠賀川式土器を例とした三次元モデルと二次元実測図データの比較」『情報考古学』27, 1-10. ―131―スピン起電力の理論研究 A dataset of three-dimensional models in Japanese archaeology 山根結太(新領域創成研究部/デバイス・テクノロジー) 田村光平(新領域創成研究部/人間・社会)

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