学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
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本年度は、口腔と認知機能を始めとした全身の健康との関係を明らかにすることを目標に、以下の4つの疫学研究:(1)日本人高齢者を対象とした歯科受診と介護費用との関係の研究、(2)シンガポールのデータを用いたTMLE手法を用いた歯の本数と認知機能との関係の研究、(3)日本とシンガポールとの口腔の健康格差の比較研究、(4)東北メディカルメガバンク機構のデータを用いた認知機能とメタボロームとの関係の研究に従事した。 (1)では、質問紙調査と介護費用データの8年間の追跡を結合した解析を行い、歯科受診が少ない人ほど介護費用が多いという関係を明らかにした(2023年5月口腔衛生学会で発表予定)。(2)では、歯の本数と認知機能低下についての関連を示した(2023年6月国際歯科研究学会(IADR)で発表予定)。(3)では、シンガポールと日本の高齢者の教育歴による口腔の健康格差について比較し、日本人の高齢者と比べシンガポールの高齢者では口腔の健康格差が大きいことを明らかにした[1]。(4)では、現在データ解析を行っている段階であり、来年度中の学会での発表を目標としている。 参考文献 [1] S. Kiuchi, J. Aida, U. Cooray, K. Osaka, A. Chan, R. Malhotra, M.A. Peres, Education-related inequalities in oral health among older adults: comparing Singapore and Japan; Community Dentistry and Oral Epidemiology (in press) ―133―大規模コホートデータを用いた口腔と認知機能との関係の解明 超臨界二酸化炭素を用いた有機キノン類の 活性炭ミクロ細孔内への含侵プロセスの開発 活性炭(AC)を担持材として用いたキノン系有機レドックスキャパシタが注目されている。昨年度は、12個のセルを接続することで6V以上の電圧を発現することに成功した[1]。一方、キノン類を液体のアセトンでACに含浸させる方法では、キノン類の担持量が十分でなく、比容量が小さいという問題があった。そこで本研究では、高い溶解力と高い拡散性を併せ持つ超臨界二酸化炭素(scCO2)を溶媒として用いることで、有機キノン類をAC細孔内部に含侵を行い、有機レドックスキャパシタの特性改善を試みた[2]。結果として、超臨界含浸されたサンプルでは、液体含浸されたサンプルと比較して1.4倍担持量が増加していた。前者では、0.26A/gの電流密度でエネルギー密度が約 1.4 倍に向上していることが確認された。scCO2含浸では、積載量や容量が増加するだけでなく、過電圧が抑制されることも判明した。 参考文献 [1] Y. Katsuyama, T. Takehi, S. Sokabe, M. Tanaka, M. Ishizawa, H. Abe, M. Watanabe, I. Honma, Y. Nakayasu, Sci. Rep. 2022, 12, 3915. [2] Y. Nakayasu, S. Sokabe, Y. Hiraga and M. Watanabe., Chem. Commun., in press. 木内桜(新領域創成研究部/人間・社会領域基盤) 中安祐太(新領域創成研究部/人間・社会)

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