学際科学フロンティア研究所活動報告書_令和4年度
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令和4年度は特に宇宙初期における位相欠陥 (topological defect) のダイナミクスに関する研究を行なった。特に宇宙初期における自発的対称性の破れに伴い形成されるドメインウォール、及び宇宙ひもと呼ばれる構造について、シミュレーションを用いた詳細な解析を行った。ドメインウォールの研究に関しては、宇宙初期に形成されるネットワークを詳細にシミュレートし、宇宙複屈折など観測的シグナルが得られるかどうかを考察した。この研究結果は論文にまとめ、主要な学術誌に掲載された[1]。 ―137―磁気回転乱流の慣性領域 Topological defects in the universe 令和4年度は、筆者が独自開発した磁気流体力学コード[1, 2]を富岳において用いて、世界最高解像度の降着円盤乱流シミュレーションを行った。その結果、申請者が核融合科学のプラズマモデルを用いて得た予言[3]とよい一致を示す結果を得ることができた。具体的には乱流揺動中の Alfvén 波的成分と遅い磁気音波成分の比が 1:2 になることが示された。 また、これと並行して相対論的磁気流体力学に微小スケールの効果を加えた拡張磁気流体モデルの線形解析を行い、分散関係を導出した[4]。分散関係の解析の結果、相対論的効果によって波の伝搬特性が大きく変化することを示した。 参考文献 [1] Y. Kawazura, Astrophys. J. 928, 113 (2022). [2] Y. Kawazura, J. Phys. Soc. Jpn., 91, 115002 (2022). [3] Y. Kawazura, et al., J. Plasma Phys. 88, 905880311 (2022). [4] Y. Kawazura, Phys. Lett. A 443, 128199 (2022). また、宇宙ひものネットワークに関するシミュレーションも行い、宇宙の暗黒物質の候補となる1つのモデルにおいて、宇宙ひものループの崩壊により現在の暗黒物質存在量を説明しうる量の暗黒物質が生成されることを指摘した。特に、このモデルにおける暗黒物質生成プロセスのシミュレーションに成功したのは世界初である。さらに、このシナリオにおいて、特徴的なスペクトルを持つ重力波が生成される可能性も指摘し、将来の重力波観測による検証可能性を定量的に明らかにした。 参考文献 [1] N. Kitajima, F. Kozai, F. Takahashi, W. Yin, JCAP 10(2022)043 川面洋平(新領域創成研究部/先端基礎科学) 北嶋 直弥(新領域創成研究部/先端基礎科学)

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