FRIS Interviews #05
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FRIS Interviews#05
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Chrystelle Bernard
Dynamics behavior of polymers,
cold-spray
学際科学フロンティア研究所は「学際的研究の開拓・推進によって新たな価値を創出し、人類社会に貢献すること」を目的としています。そのコンセプトを所属研究者によって語り、考える企画が本連載『ボーダーを越えて』です。
それぞれの研究人生に触れながら、「自分が体験した学際的な活動を語っていただきます。学際フロンティア研究所(以下、学際研)の理念と実態を浮き彫りにすると同時に、学際研のメンバーが対話を通じてこれからの組織のあり方を考える場です。
「研究者」を目指したきっかけ
- Chrystelle Bernard(以下、Chrystelle)
- 私は材料の熱力学的挙動について研究しています。それぞれ材料には異なる微細構造と材料特性があるので、とても広い分野となります…。一つの材料について完全に理解しようとするだけでも多くの研究が必要です。
- 高校卒業後、大学で数学の学位を取得しました。また同時期に固体・流体力学の講義にも出席し、数学を用いて力学の問題を解いていました。これは非常に楽しく、達成感もありました。わかりやすく言うと、クリスマスのプレゼントを開けるのをワクワクしながら待っているような感覚です。その頃に、より複雑な問題を解決するためこの分野の研究を続けていこうと考えるようになりました。その時も今でも、挑戦と向かい合い、自分で証明をするという方法を取っています。その後、私は数学の応用力学を専門とする工学系の大学へ進学しました。
- そこでは有限要素法や有限体積法に基づき、数値シミュレーションを応用し、塑性変形、障害、動的な誘導などを含む、より複雑な問題を解決しました。
- 博士課程の時にこの分野の研究を続けようと決心したのですが、その理由については上手く答えることができません。あえて言うのであれば、単純に楽しかったから、そしてパズルを作り、解くことが好きだから、ということになります。
Chrystelle Bernard
学際科学フロンティア研究所 助教 (エリートマックスメンバー*)
ボルドー第1大学修了(工学・数学・機械モデリング)。ストラスブール大学博士号(材料力学)。 ストラスブール大学ポスドク研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、2017年から現職。 専門は力学とポリマーの数値モデリング。とくに最近は、コールドスプレー工程におけるポリマー粉末と金属基板の接着メカニズムに取り組んでいる。 *ELyTMaX(エリートマックス:フランス国立科学研究センター(CNRS)、リヨン大学(Université de Lyon)と東北大学が連携した国際共同研究ユニット)
「分野」の枠を飛び出す勇気
- Chrystelle
- 私たちの環境を注意深く見ると、全てがつながっているということがわかります。例えば、現象やプロセスを完全に理解するためには、いくつかの科学や技術を組み合わせる必要があります。つまり、異なる科学的な課題を明らかにするためには、適した方法論を見つけることで、解決に導くことができます。
- 学士と修士の研究では、いつも数学と力学を組み合わせていました。どちらの分野も似ている科学ではありますが、あえて学際的科学として研究していました。これまで関わった多くのプロジェクトにおいて、個人では力学、数値シミュレーション、及び数学の研究に携わってきました。とはいえ、これらのプロジェクトには、その他の分野の研究パートナーとの共同研究も含まれています。また、私が分析しようとしている現象は、材料物理学、物理化学、さらには生物物理学とも強く結びついていることから、シミュレーションの方法として、物理的挙動の法則を利用しようと考えています。これは環境条件(気温など)の効果を予測する唯一の方法です。これが私のプロジェクトがより学際的な研究となっている要因です。
- プロジェクトの目的を達成させるには、様々な側面を考慮する必要があります。学際科学の研究を行い、研究プロジェクトを開発し、必要とされるすべての科学を考慮するためには、非常に重要なことです。
「異なるもの」を見つめる視点
- Chrystelle
- 他の学問についてどう考えるか…これはなかなか難しい問いです。すべての学問はその世界で必要であると考えています。ある学問は過去の文明をより理解するのに役立ち、またある学問は人々の生活の向上に役立ちます。またある学問は人の構造へのダメージを予防し減らすことができます。また人間活動にも役立ちます。
- 学際研の興味深い点は、学際的研究機関であるため、自らとは全く異なる研究分野の研究者と交流できることです。この交流によって、自らの教養を広げることができます。また、学際研が開催する様々なセミナーやワークショップは多くの研究者と知り合い、それぞれの研究について話し合うことができる良い機会となります。
「学際」の未来
- Chrystelle
- 学際研に所属していることは、研究を行う上で素晴らしい利点と言えます。まず、自らの研究費を得ることができる点が大きいです。さらにより広い研究をするために、学際研の提供するその他の研究費に応募し、自らの研究費として補うこともできます。また年間を通してセミナーやワークショップが開催されているので、様々な分野の新しい研究に触れることができます。
- 私が学際研に着任して以来、英語しか話せない外国人研究者に対して、コミュニケーションがより積極的に行われるようご尽力いただいていると思います(セミナー、ワークショップ、研究費など)。外国人研究者が自らの研究について発表する機会を下さったり、また他の方の研究について理解できるよう働きかけたりして下さいました。いつも外国人研究者に対して配慮して下さる皆さんに、この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。日本人研究者にとって英語を話すことは容易ではないと十分理解していますので、本当に感謝しています。
- 学際研は学際科学研究機関というだけではありません。その研究員の多くは日本人ですが、多文化・多言語機関であるとも言えます。そのため学際研の未来は、学際研の研究員とその研究の進化によって作られます。もちろん、研究分野の学際性は大切なことですが、他の分野や文化、そして言語に対して寛容であることも同じくらい大切です。そして、このお互いをより理解しようとする姿勢が、人間社会をより豊かにすると考えています。
[2017年12月22日]