東北大学
学際科学フロンティア研究所

FRIS Interviews #11

FRIS Interviews#11

  • 川面 洋平Yohei Kawazura

    プラズマ物理Plasma physics

既存の枠にとらわれない、
プラズマ研究で世界をリード。

あなたがFRISを選んだ理由は。

さらに研究領域を拡大し、より挑戦的な研究ができると思ったから。

川面
第一に私自身が以前から学際的な研究をしていたという点が大きいです。私はポスドクとして渡英した際にそれまで行っていた研究から研究対象を大きく変えたので、日本国内に研究ネットワークがほとんどありませんでした。日本では就職先の部局や研究室の研究分野に沿う人が採用される傾向があると感じていたので、日本での就職を考えた時、ネットワークがない自分は不利に感じていました。その点、全分野から研究者が集まり研究計画によって公平に審査されるFRISは応募がしやすかったということが、FRISを選んだ理由の一つです。FRISを知ったのは、天文系研究者のコミュニティでFRIS准教授の當真先生が就職先の一つとして紹介していたから。「こういうポジションがあるのか」と驚く一方で、FRISが一番自分に合っているのかなと思い応募しました。渡英中に広げた研究領域をさらに拡大したかったので、FRISではそれが可能であり、より挑戦的なことをさせてくれそうだと思いました。

現在の研究内容について教えてください。

プラズマの知見を活かし、天体現象の微小スケールの物理を研究しています。

川面
宇宙に存在する目に見える物質のほとんどはプラズマ状態にあります。プラズマとはイオンと電子で構成されたガスのことで、固体、液体、気体に続く物質の第四の状態です。宇宙では太陽から吹き出る風や、惑星を取り巻く磁気圏、さらにはブラックホールの周りを回る降着円盤や銀河団を満たすガスなどがプラズマで構成されています。一方、私達の身の回りでも微細加工などにプラズマが応用されています。また高温のプラズマを人工的に閉じ込めることで可能となる核融合発電は、未来のエネルギー源として期待されています。プラズマを能動的に活用することで私たちの生活は変わることでしょう。プラズマ物理学とは、このように宇宙の至るところに存在するプラズマの性質を深く詳しく探求する学問です。驚くべきことにプラズマ物理学の基礎方程式は、私たちの身の回りから銀河に至るまでの広大なスケールで起こるプラズマ現象を統一的に記述することが可能です。その意味では、プラズマ物理学とは本質的に学際的な学問といえるでしょう。プラズマ物理学は古い学問であり、日本の研究は昔から世界をリードしてきました。古くは名古屋大学のプラズマ研究所の存在が大きく、岐阜県土岐市にある核融合科学研究所も世界で認められる存在であり、世界の研究を引っ張っています。 私が最近興味を持って取り組んでいるのは、降着円盤における微小なスケールのプラズマ乱流の理論・シミュレーション研究です。微小なスケールのプラズマ乱流はこれまで核融合研究や太陽圏において精力的に行われてきました。実験室プラズマや太陽風・磁気圏では微小なスケールでも直接計測をすることが可能ですので、計測結果を説明できるよう理論も発展しています。一方、降着円盤などの遠くの天体では微小なスケールを直接計測することは困難であるため、私は実験室や太陽風で得られたプラズマの知見を活かし、降着円盤の微小スケールの物理を理論的に予測することを目標にしています。
川面 洋平Yohei Kawazura

学際科学フロンティア研究所 助教。
東京都出身。2004年に東京大学に入学して以来、大学院、日本学術振興会特別研究員、助教期間を含め13年間を東大で過ごす。その後オックスフォード大学を経て2019年4月よりFRIS助教に。プラズマ物理を専門とし、現在は太陽風や降着円盤などの天体現象におけるプラズマ乱流の研究を行っている。

FRISの特徴や魅力を教えてください。

完全に研究に集中できる環境。改革的なマインドが根付いている。

川面
魅力は、何と言っても研究に完全に集中できる環境だと思います。また潤沢な研究費を使わせていただけることや競争的資金の公募案内など、研究者として独立するためのサポート体制がしっかりと整備されています。そして、各分野で活躍している若手研究者から良い刺激を受けられるのもFRISならではの魅力です。異分野の研究者との交流機会が多く設けられており、特に合宿形式の『FRIS retreat』はお互いの専門分野に関する知識を交換するとても刺激的な機会でした。自分では当たり前と思っていたことも別の分野の方から突っ込まれると意外に答えに窮することがあり、深く考える機会になりました。

 最も大きなFRISの特徴は、“改革的”であることでしょうか。早瀬所長をはじめFRISを運営される先生方は、常に若手の意見を取り入れてFRISをより良い組織にしようとされています。ある研究員から出た意見が翌年には反映されている、などという話も聞きます。一方、FRISには海外研究機関から来た研究員が多く、国際的感覚を持ち、日本のアカデミア界をより良くしたいという強い意志を持つ人が多くいるように思います。このような組織は他にないと思います。私も以前、オープンアクセス誌の掲載料数十万円の補助に関する要望を出しましたが、会議で検討いただきすぐに制度化されました。若手の意見がすぐに通る環境に感謝しています。

FRISでの経験を生かし、どのような将来像を描いていますか。

「プラズマのことなら川面に聞け」と世界に認識される研究者に。

川面
プラズマ物理は本質的に学際的な学問ですが、プラズマ物理のことだけを知っているのでは知識として足りず、応用先のシステムに関する知識も必要です。そのためには自分の専門分野にこもるのではなく、積極的に異分野と関わっていく姿勢が不可欠だと考えています。将来的には、プラズマが関わっているさまざまなシステムを物理的に理解できるようになり、また異分野の専門家から、「プラズマのことなら川面に聞け」と思ってもらえるような研究者になりたいと思っています。

FRISではどんな人が活躍できそうですか。

批判的精神を持ち、既存の考え方にとらわれず、現状を打破する行動力を持つ人。

川面
批判的精神を持っていて、既存の考え方にとらわれない人が活躍できるのではないでしょうか。海外から戻ってこられた方も多いので、環境を改善しようとする人が多いと感じます。FRISにも制度的な課題はありますが、今までこうだったからという既存の考え方にとらわれず、現状を打破する行動力を持っている人が活躍できるのではないでしょうか。実際にFRISにはそういう人が大勢いるように見受けられます。

FRISをおすすめしたい理由は。

アカデミックな孤独感を感じていても、公平に評価し後押しをしてくれます。

川面
自分の研究が既存の研究分野に収まらない、自分と似たようなことをやっているグループが存在しない、などアカデミックな孤独感を感じている人、もしくは新しい研究分野を開拓したいと思っている人にはおすすめです。FRISなら学際性という点から公平に研究内容を評価してもらえますし、挑戦的な研究を進める後押しをしてくれます。

仙台での暮らしや環境について。

自然豊かな街並みを歩いて通勤するひとときに癒されています。

川面
気に入っています。仙台は以前から学会などで何度も来ていましたが、毎回いいところだなぁと思っていました。便利さや自然の近さなど色々いいところはありますが、実際に住み始めて気付いたことは「モラル意識の高さ」です。地下鉄車内や駅には「歩きタバコはやめましょう」とか「エスカレーターは左右均等に乗りましょう」などといった広告が多くあり、また新型コロナウイルスが広がり始めたときはいち早く地下鉄で咳エチケットの喚起アナウンスが流れていました。モラル意識が比較的低い東京・イギリスから来たのでその意識の高さに感心したことを覚えています。一方で残念なのは、外国料理のレストランが少ないことです。イギリスにいたときは週2日開かれるマーケットに出向いて世界中の料理を食べていたので、帰国してからは、そのときの味が恋しくてわざわざ材料を集めてエチオピア料理などを作ることもあります。もっと食事が国際色が豊かになると嬉しいですね。
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