東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

学際研究共創プログラム 研究概要(2021年度採択)

学際科学フロンティア研究所

工藤 雄大 助教

採択課題名
「こわれもの注意」:食物連鎖を通して生物発光が海洋生態系にもたらされるメカニズム
実施年度 2021-2022

自然界は生物が発する光(生物発光)に溢れている。とくに海洋では生物の76%が発光すると言われている。多様な生物は、餌の探索や、同種への求愛、捕食者への目眩しといった様々な行動に発光を利用しており、生物発光は海洋環境における種の繁栄に重要な能力である。ところが、多くの発光生物は自身で発光分子を産生することができない。これまでの定説では、生物は食物連鎖を通して餌に含まれる発光分子を取込み、発光能を得ていると考えられてきた。しかし、化学的に極めて不安定な発光分子が、消化・吸収の過程で活性を持ったまま取り込まれるとは考えにくく、この定説を裏付けるような実証研究はこれまでになかった。

我々は、被食―捕食関係における発光分子の挙動の解析、ならびに輸送に関わる関連分子の同定を行うことで、海洋生態系における発光能力の獲得プロセスを解明できると考えた。本研究では、東北大学・工藤(天然物化学・有機化学)による質量分析器(MS)と核磁気共鳴装置(NMR)を用いた発光関連分子の化学的な分析、名古屋大学・別所-上原(分子生物学・生物発光学)による発光に関連する酵素機能の解析と遺伝子の発現解析、名古屋大学・萩尾(解剖組織学・魚類学)による被食者―捕食者の両生物における発光関連分子の局在解析を実施する。分野横断型の連携による多面的な解析を展開することで、海洋生態系における生物発光能力の獲得メカニズムの理解を目指す。


 
PAGE TOP