東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

学際研究共創プログラム 研究概要(2023年度採択)

学際科学フロンティア研究所

波田野 悠夏 助教

採択課題名
多領域解析法による日本列島南西端の島嶼文化起源の解明
実施年度 20223-2024

日本列島の南西部に位置する琉球列島は、多様な文化やコミュニティが形成されてきた島嶼地域です。琉球列島は、地理的には奄美群島や沖縄諸島を含む北琉球(中琉球とも)と、宮古諸島や八重山諸島からなる南琉球に分けられます。特に先史時代においては北琉球と南琉球では文化的な違いが大きいことが考古学的に明らかにされており、その要因については集団的な違いを反映している可能性や、各島の環境に対する適応の違いを反映している可能性が提起されています。また、近年は集団遺伝学や言語学といった様々な人類に関わる研究分野からも南琉球の人類の系統や起源に関する論が提示されていますが、先史の二つの琉球をめぐる様々な仮説は考古学的データに基づいた具体的な検証に至っていません。

そこで本研究は、先史南琉球の文化が北(中)琉球とは異なる特徴を持つことになった要因に対する仮説の一つ「環境適応説」に注目し、南琉球独自の物質文化である貝の斧(貝斧)の発生と定着の理由についてアプローチします。この貝斧は、従来は南方地域からの集団移住を示す有力な根拠とされましたが、近年は石の斧(石斧)と地域的な使い分けがあることが判明し、環境適応的に生み出された可能性が指摘されています。本研究では南琉球で出土した貝斧と石斧の「使用痕」や「形態選択」に注目し、歯科学(波田野)・数理科学(田村)・考古学(山極)を横断した研究を構築することで、南琉球の貝斧と石斧の製作や使用における関係性を明らかにし、環境適応説の妥当性を検証します。また、こうしたデータを基に従来の考古学的なデータ(年代・共伴物質文化・地域間の類似関係など)を組み合わせて周辺地域との関係性についても検証し、先史時代の北(中)琉球と南琉球において文化的な違いが生じた要因、その起源へとアプローチします。

 
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