東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

学際研究共創プログラム 研究概要(2024年度採択)

学際科学フロンティア研究所

金村 進吾 助教

採択課題名
様々な感染症に対峙するレドックス生体防御システムの解明
実施年度 2024-2025

COVID-19に代表されるように、国境を越えたヒトの移動が活発になった社会ではウイルス・細菌・寄生虫が引き起こす感染症は地球規模の問題となっている。これら病原体が体内に侵入した際に重要となる生体防御システムに自然免疫が挙げられる。自然免疫は大きく分けて抗菌ペプチドによる病原体の処理と食細胞による貪食が挙げられ、感染症研究者を中心に昔から多くの研究が成されている。

金村は構造生化学の研究を行う中で、様々な生物に存在し、タンパク質の立体構造を制御する酸化還元(レドックス)酵素PDIがCOVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2の感染を抑制することを示した。その機構は感染に必要なSARS-CoV-2スパイクタンパク質中のジスルフィド結合切断が起因する構造崩壊による失活化であり、これまでの生体防御システムとは一線を画す。構造安定に重要なジスルフィド結合は様々な病原体が有しており、PDIがこれら病原体の失活化を選択的に触媒する可能性がある。そこで、本発見を感染症に対する新たな生体防御システムの学理を構築するため、性質の異なる様々な病原体を用いてきた村越(感染症学)と学際融合研究を展開する。本研究により、感染症創薬研究において単一分野の研究ではたどり着けない、新たなイノベーションを創出することが期待できる。

本研究において、まずは腸管に感染するウイルスであり、動物実験による実証が可能なサルロタウイルス(SA11株)を用いて実験を行う。その後は、同様に腸管に感染する寄生虫(クリプトスポリジウム)や、肺に感染する他のウイルス(インフルエンザウイルス)などに研究を発展させる。研究分担者である村越はこれら全ての病原体の扱いに熟知しており、金村と綿密な連携を図ることによってこれら病原体に対するレドックス酵素群の抑制効果について網羅的な解析が可能となる。

 
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