東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

学際研究共創プログラム 研究概要(2025年度採択)

学際科学フロンティア研究所

千葉 杏子 助教

採択課題名
神経細胞におけるフェロトーシスと細胞クリアランスの分子メカニズム
実施年度 2025-2026

アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、神経細胞が徐々に壊れていくことで発症します。しかし、なぜ、またどのように神経細胞が死に始めるのか、その仕組みはまだ十分に解明されていません。本研究では、近年注目を集めている「フェロトーシス」と呼ばれる新しいタイプの細胞死に着目しています。フェロトーシスは、細胞内の二価鉄イオンや過酸化脂質の蓄積によって細胞膜が壊れ、細胞が死んでしまう現象であり、ヒトの疾患との関連も示唆されています。特に注目すべきは、フェロトーシスが“伝染”するように周囲の細胞にも連鎖的な影響を及ぼすことが最近明らかになってきたことです。つまり、ひとつの細胞の死が引き金となり、ドミノ倒しのように神経細胞が次々と壊れていく可能性があるのです。こうした連鎖的な細胞死を防ぐ鍵として、近年「食細胞が壊れかけた細胞をきちんと除去する仕組み=クリアランス機構」がこの連鎖を止める鍵になるのではないか、という仮説が浮上しています。今回の研究では、このフェロトーシスとクリアランスの関係に注目し、神経細胞の“お片付け”の仕組みや、それを担うタンパク質の働きを明らかにしようとしています。この研究は、栄養学、生物物理学、細胞生物学の3分野の専門家が連携して進めるプロジェクトです。神経細胞の中で何が起こっているのかを多角的に解析し、細胞の死とその制御機構に新しい理解をもたらすことが期待されます。将来的には、神経変性疾患の進行を止める新しい治療戦略につながる可能性も秘めています。

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