公募研究
学際研究共創プログラム 研究概要(2025年度採択)
学際科学フロンティア研究所
LE Bin Ho 助教
採択課題名 |
A quantum algorithmic approach to the strong CP problem in quantum chromodynamics
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実施年度 | 2025-2026 |
量子色力学(QCD)は素粒子物理学における強い相互作用を記述し、原子核の形成を説明する理論である。QCDは確立された理論であるが、「強いCharge-Parity (CP) 問題」という未解決の問題が存在する。即ち、理論はCP対称性の破れを予言しているが、一方で、実験結果はその破れが極端に小さいか、ゼロであることを示唆している。 CP対称性の破れ具合はパラメターθを用いて定量化される。理論はθが1程度であることを予言しているが、実験はこの値が10-11より小さいことを示している。この不整合は既存の理論モデルを超越した、未知の物理のヒントであると解釈できる。故に、これを突き詰めるためには精緻なシミュレーションを用いたQCDの解析が必要である。しかし、量子系の複雑性が従来の古典コンピュータでの解析を困難なものにしている。 このプロジェクトは、強いCP問題に関する解析に量子計算を応用する新たなアルゴリズムを展開することを目的とする。特に、近い将来に実現可能な量子・古典ハイブリッド計算を用いたアプローチを提案する。強いCP問題は量子物理に基づいているため、従来の古典計算によるアプローチでは暴けない量子的側面が量子計算により顕になるかもしれない。 我々の研究は量子計算、高エネルギー物理、アルゴリズムデザインの分野横断研究である。特に、従来の古典計算によるアプローチでは容易に解けない、基礎科学における困難な問題に対し、量子計算がどのようにして有効に働くかを示す。本研究では、QCDにおける長年の未解決問題に焦点を当てることで、量子計算技術が新たな科学的発見をもたらす可能性を開拓する。 |
