公募研究
学際研究共創プログラム(アルムナイとの共同研究)研究概要(2025年度採択)
学際科学フロンティア研究所
阿部 博弥 准教授
採択課題名 |
電気化学的手法によるDNA液滴の動的制御
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実施年度 | 2025-2026 |
本研究は、電気化学的手法によりDNA液滴の形成・消失を空間的・時間的に制御する新たな技術を確立し、人工分子集積系や反応場の創出に応用することを目的とする。細胞内では、液-液相分離(LLPS)によって膜を持たない生体内区画が形成され、局所的な分子濃縮や酵素反応の制御など、重要な生理機能を担っていることが明らかになってきた。特に、タンパク質やRNA、近年ではDNAによっても液滴が形成されることが示され、生体分子液滴の形成・制御は、生命現象の理解や生体模倣材料の開発において極めて重要なテーマとなっている。 しかし、これらの液滴を外部から自由に制御する手法は限られており、従来は光照射や温度変化といった物理刺激に依存していた。本研究では、共同研究者である九州工業大学 佐藤准教授と協力しpH応答性DNA液滴の設計・合成した機能性液滴を構築する。そして、阿部が専門とする微小電極による電気化学的アプローチを導入し、局所的なpH変化を通じて液滴の生成・消滅をリアルタイムかつ高精度に制御する手法を開発する。このDNA液滴は酵素修飾することも可能であり、酵素反応を局所的に閉じ込めた反応場として機能させることができる。これにより、細胞内のような空間選択的な酵素活性の制御が可能となり、人工的な生化学反応系や高感度バイオセンシング技術への応用が期待される。得られた液滴の構造変化や酵素活性を定量的に解析し、数理モデルを構築することで、応答機構の理解を深めるとともに、将来的には人工細胞的な機能を持つ反応場設計への展開を目指す。 |