東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

学際研究共創プログラム(アルムナイとの共同研究)研究概要(2025年度採択)

学際科学フロンティア研究所

松平 泉 助教

採択課題名
逆トランスレーショナルリサーチによる世代間伝達の神経基盤の探索
実施年度 2025-2026

親の形質が遺伝や環境を介して子に影響することは「世代間伝達」と呼ばれる。例えば、親の精神疾患が子の発症リスクを高めることが報告されている。このような精神疾患の連鎖を断ち切るために、世代間伝達の機序の解明が求められている。

世代間伝達の機序に迫る手法として、親子の脳画像解析が注目されている。親子で構造的な特徴(皮質の厚みや体積など. 以下、脳構造)が類似する脳領域を特定し、その領域の発達に関わる要因を推測することで、世代間伝達の仕組みを理解する手がかりが得られる。代表者の松平は、父・母・子からなる親子トリオのMRI画像を解析し、脳構造の類似性が親子の性別の組合せによって異なることを報告している[Matsudaira et al., 2025; iScience]。

ただし、脳画像解析には、抽出された特徴量が細胞レベルで何を反映しているのかが明確でないという限界がある。そこで本研究では、マウスの親仔を対象とした実験により、脳構造の類似性が持つ神経生物学的意義を探究する。マウスの交叉哺育実験を行った上で、母マウスと仔マウスの双方のMRI撮像と、脳組織染色を行う。MRI画像と組織染色画像のそれぞれから得られる指標における母と仔の類似性を分析し、結果の対応関係を検討するとともに、ヒトの知見との統合的な解釈を行う。

本研究は、ヒト脳画像解析の成果に神経細胞レベルの解釈を加える逆トランスレーショナルリサーチに位置づけられ、ヒトを対象とした脳科学を専門とする松平のみでは実施困難な課題である。そこで、感染症学の専門家としてマウス実験に精通する学際研アルムナイの村越ふみ准教授(東京農工大学)との共同研究として実施する。本研究を通じて、各々の研究の射程を学際的に拡張することを目指す。

 
 
 
 
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