公募研究
学際研究支援プログラム 研究概要(2016年度採択)
採択課題名 |
イオニクスデバイスを用いた電気的磁気物性制御
|
---|---|
実施年度 | 2016-2018 |
電気的な磁性制御は、エレクトロニクス技術との親和性から、応用物性分野において広く関心が持たれてきた主題の一つである。例えば、電子の持つ電荷とスピン自由度を組み合わせて、新たな機能を研究するスピントロニクス分野においては、強磁性転移温度や磁気異方性の電場制御といった、顕著な成果が報告されている。これらの研究では、半導体分野で電気伝導度制御に用いられてきた電界効果トランジスタ(FET)を用いて、半導体界面や金属薄膜の電子密度を変えることで、電気的な磁性制御が行われている。しかしFETでは界面に蓄積された電荷キャリアによる静電遮蔽効果の為、制御対象は薄膜や試料界面に限定されてしまう。 この問題に対し本研究では、リチウムイオン電池(LIB)に代表されるイオニクスデバイスの蓄電技術を、バルク物質の高密度フィリング制御法として利用するという着眼点で、新しい電気的磁性制御の実現を目指している。特に、分子性化合物において、酸化・還元に伴うラジカルスピンの生成・消滅を制御することで、可逆的な磁性相スイッチングの実現に取り組んでいる。この手法で誘起された磁性状態は電気化学平衡にある為、一度その状態にしてしまえば電力供給がなくとも状態が維持されるという特徴(不揮発性)を有する。このような酸化・還元反応を伴うイオン輸送を介した磁性制御は最近、 “Magneto-ionic control”と呼ばれ注目されており、今後、新たなスピン-イオン協奏現象デバイス(マグネトイオニクスデバイス)の創出につながることが期待される。 |
LIBによるラジカルスピンの生成・消滅を介した可逆的な電気的磁性相制スイッチング