東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

国際共同研究支援 報告

小嶋 隆幸(新領域創成研究部 助教)

派遣先/ケムニッツ工科大学・ドイツ

期間/2019.8.17–9.22

若手研究者国際共同研究支援プログラムのご支援をいただき、ドイツのケムニッツ工科大学のMarc Armbrüster教授の研究室に滞在し、共同研究実験を実施してきました。私は主に磁性材料として有名なホイスラー合金(X2YZ)という金属間化合物(構成元素の割合が整数比でそれぞれの原子が規則的に配列)を触媒に応用した研究に取り組んでいます。金属間化合物は従来に無い触媒機能を示すため近年注目度が高まっていますが、触媒に詳しい化学者はあまり金属に詳しくなく、金属学者はあまり触媒に詳しくないため、両方に精通する研究者は殆どいません。また、それぞれの分野で使う実験装置の種類も異なるため、両方の分野の装置が十分に揃った環境も殆どありません。Armbrüster教授は元々の専門が金属で、その知識・技術を活かして触媒研究に取り組んでおり、世界で唯一と思われる「金属間化合物触媒に特化した研究室」を運営しておられます。そこで、私のホイスラー合金触媒について、その機能性をより精密に評価するための共同研究を実施しました。

 

グローブボックス中で合金を粉砕して触媒試料を調製し、空気に触れさせずに触媒反応装置にセットして理想清浄表面における触媒特性を評価したり、副生成物を詳しく分析したり、反応中の触媒の構造変化を分析したりしました。残念ながら実験装置のトラブルが相次ぎ、計画していた実験を全て完了することができませんでしたが、いくつか有益なデータを得ることができました。また、Armbrüster研究室ならではの視点から多くの助言を受け、有益な議論をすることができました。さらに、滞在中に知り合った別の研究者とも国際共同研究を開始することができました。

 

ドイツの研究生活は、朝8時過ぎくらいから殆どのスタッフと学生が揃い、16時くらいには殆ど帰るというスタイルでした。居候の身の自分だけが夜間に実験するわけにもいかず、夜型人間だった私も強制的に朝型生活に変わりました。確かに朝型の方が健康的だなと気づき、帰国後も朝型の生活を続けるようになりました(さすがに16時に帰るのは無理ですが)。一番驚いたのは、プレゼンの終わりなどには拍手の代わりに机をグーでコンコンコンコンと叩くことでした。ドイツだけの文化だそうで、初めての研究室ミーティングで遭遇したときは学生がまずいプレゼンをしたために怒りを表現しているのかと思いました。

 

ケムニッツは旧東ドイツの街で、ドレスデンから快速電車で1時間という小さなところでした。日本でいえば、ドレスデンが仙台でケムニッツは山形という感じだと思います。以前はカール・マルクスシュタットと呼ばれていた街で、中心部にはカール・マルクスの巨大な顔面像がありますが、カール・マルクスの生誕地や居住地でもなく、何のゆかりも無いらしいです。小さな街なので英語を話せる市民は殆どおらず少々苦労しましたが、笑顔でボディランゲージすれば大抵解決できることがわかりました。あと、Google翻訳は超有能です。
 

ドイツの料理は全然野菜が無いのが驚きでした。野菜を食べなくても栄養素を吸収できる体質になっているんだと思いました。至るところにあるケバブ屋やアジアン料理屋のおかげで栄養失調にならずに済みました。ただし、ビールは最高においしく種類も豊富なため毎日1本いろんな銘柄を楽しむことができました。特に、最初の2週間くらいは猛暑で、ドイツの殆どの施設にはエアコンが無いため死にそうでしたが、ビールは最高に美味かったです。

 

このように非常に充実した国際共同研究滞在を体験することができました。本プログラムのご支援に心より感謝申し上げます。

 

居室にて。右: 筆者、中: Armbrüster教授、左: ギリシャ人の博士研究員。
 
ケムニッツの中心部にあるカール・マルクスの巨大な顔面像。
 
休日に訪れたザクセン・スイス(ザクセン州のスイス)と呼ばれる山岳地帯。
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