東北大学
学際科学フロンティア研究所

公募研究

国際共同研究支援プログラム 報告

奥村正樹(新領域創成研究部 助教)

派遣先/ 韓国(韓国基礎科学研究院(KBSI))  

期間/2021.9.1-10.31

若手研究者国際共同研究支援プログラムのご支援をいただき、当初韓国Korea Basic Science InstituteのProf. Young-Ho Leeに滞在し、実験および現地の研究者との共同研究を行う計画であったが、COVID-19による渡航規制が厳しかったため、共同研究費として予算執行とした。
 
本共同研究では、これまで大きく2つの課題について議論が挙がっていたが、渡航規制があったため各研究機関での実験の遂行と定期的なzoom会議によって遂行した。
 
第一の共同研究の課題は、新たな「生物学的相分離」の現象の発掘である。この現象の理解のために、Korea Basic Science InstituteのProf. Young-Ho LeeのところではNMRを用いた原子レベルでの理解の追及を行い、相分離因子がタンパク質構造上どこの部位に結合しているのかを追求する必要があった。その結果、従来考えられていた結合部位以外に、新たな結合サイトを2か所特定するに至った。また、東北大学奥村研では、屈折率を装備する蛍光顕微鏡を学術変革領域Bの予算で導入し、リアルタイムで液滴内部への各分子の取り込みの可視化を行った。本装置はKAIST発ベンチャーであるTomocube社製品であり、以前に訪韓時に先方の装置視察・デモ測定の結果、導入した経緯である。以上の結果を踏まえ、現在論文投稿準備中であり、大きな進展があった。
 
第二の共同研究の課題は、新興感染症に関わるウイルスの無毒化である。既に共同研究課題として、幾種かの無毒化酵素を特定していたが、本課題でウイルスの一部を購入し、その検証例の拡大を行なった。その結果、あるウイルスの変異が挿入されたとしても、これら酵素は野生型と同じく、ウイルス感染を抑制することが新たに分かった。現在、このウイルスと酵素との相互作用における計算科学アプローチを東北大学学際研の馬渕助教に行ってもらうとともに、
Korea Basic Science InstituteのProf. Young-Ho LeeのところではNMRを用いたタンパク質間相互作用解析を行っている。以上の結果を踏まえ、現在論文投稿準備中であり、大きな進展があった。
 
以上、本国際共同研究支援プログラムにより、渡航計画は社会情勢上断念せざる負えない結果となったが、zoomによるオンライン会議に切り替えることや研究費として使用することで、共同研究が加速し、大変有意義であった。今後、KBSIのメンバーと、今後材料系のHVEMの視察や装置案内をお願いし、Tohoku university-KBSIの機関協定における分野拡大を狙った協力体制を構築し、サイエンス力向上を目指す。
 
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